「…修羅場?」
目の前の惨状に思わずそんな言葉が出てきた。
「…テワク、マダラオ――生きてますか…?」
「「な…何とか、生きてる(生きてますわ)…」」
白と黒の布塗れの居間で倒れこんでいる2人にアレンが声を掛けると、"辛うじて"と言った様子で声が返ってきた。
「…無理しちゃダメですよ、2人共…。」
明らかに"徹夜明けです"と言わんばかりの2人の様子にアレンは心配そうに言うが、2人の口からは"…仕方がない"と返ってくるだけ。
件の文化祭まで後僅か――その為、寝る間も惜しみ…半ば徹夜で2人は作業しているのだ。
「何か作りますけど、リクエストありますか?」
そんな半ば死人の様になっている2人に、アレンが言うと――マダラオは"…コーヒー"、テワクは"カフェオレをお願いします"と答えたので
アレンは"分かりました"と言って、キッチンの方へと向かい…そんなアレンの背中を見送りながらマダラオとテワクは眠気に負けて目を閉じてしまった。
「出来ましたよ、2人共――って…」
リクエスト通りにコーヒーとカフェオレを作って戻ってみると、当の2人は完全に眠っている…やっぱり徹夜作業が響いた様である。
(このままじゃ風邪引いちゃうな…)
そう思ってアレンは辺りを見回すと、タオルケットが2枚あったのでそれぞれに掛けてあげた。
(…あ、クマが出来てる。)
眠っている2人の顔を見れば、クマが出来ているのを見つけてアレンは顔を曇らせる。2人が徹夜をしている事情を分かっている為、余り強く言えないが…。
「…無茶しちゃダメですからね。」
そう言いながら"ポンポン"と2人の頭を撫でていたアレンは"折角だから御飯でも作ろう"と思い付き"スッ"と立ち上がった。
「…冷蔵庫、見なくちゃ。」
2人の眠りを妨げぬ様…小声でそう言ってアレンは再びキッチンへ向かった。
(ん、いい匂い…。)
"ふわふわ"と漂ってきた匂いにテワクは意識を浮上させ、辺りを見回すと――。
「――アレン…?」
「あ、起きました?」
その声に振り向いたアレンの手元を見てみれば――。
「――おじや、ですか…?」
「ええ、胃に優しいですよ。」
言外に"最近、ちゃんとご飯食べてないでしょう?"と言われて、"うっ…"と言葉に詰まった。
確かに…ここ数日はアレンが言う様に自分も兄も制作作業を優先していたので碌に食事を摂ってなかったのだ。
「――頑張るのも良いですけど、食事はちゃんと摂らなきゃダメです。」
「…は〜い…。」
アレンの言葉にテワクはバツが悪い声と顔で返事をした。
「もう直ぐ出来るんで、マダラオを起こしてきて貰えます?」
「分かりましたわ。」
そう言ってテワクは未だ目を覚ましていないマダラオを起す為、リビングへと足を向けた。案の定マダラオは中々起きなかったが
"兄様、ご飯ですわ!"とテワクが声を掛ければ、"う〜"と呻きながら漸く起きたのだった。
そして、3人揃った所で――。
「「「いただきます。」」」
食前の挨拶をし、温かな御飯に手を付けた――その日の夕飯はとっても美味しく感じたのは言うまでもない。
夕飯の片付けを済ませたアレンが家に帰った後――2人は手を動かしながらこう言った。
「あと少し――兄様、頑張りましょう。」
「――そうだな。」
文化祭まであと少し――ラストスパートを掛ける為、2人は気合を入れた。
End.
Title:『Fortune
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