「「「Trick or Treat!!」」」
――子供達の可愛らしい声が店に響き渡った。
「はい――どうぞ、気を付けて帰るんですよー。」
魔女の格好をしたアレンがそう言って子供達にお菓子を渡せば"おねーちゃん、ありがとう"と言って子供達は店を後にした。
「賑やかですねー。」
「――賑やかなのは良いんですが…。」
ニコニコとしているアレンに対し、些か"げんなり"とした表情をしているリンク―因みに彼の格好は狼男である―そんなリンクにアレンは首を傾げるが…
ふとある事が思い浮かび尋ねる。
「あの、もしかして…――」
「ええ…お察しの通りですよ、ウォーカー…。」
アレンの問いかけに、去年降り掛かった"悪戯"を思い出したのか…リンクが遠い目をする。
「…因みに――何されたんですか?」
「…クラッカー向けられた挙句に唐辛子入りのクッキーを口に放り込まれましたよ…。」
リンクの口から語られた"悪戯の内容"にアレンは、"誰"が"リンクに悪戯"をしたのか察して苦笑する。
「…笑い事じゃありませんよ、ウォーカー…。」
「――でも、"仕返し"したんでしょう?」
何処か拗ねた様な感のリンクに、アレンがそう言えば…リンクは"当たり前です"と答える――"彼ら"にどんな"仕返し"をしたのか興味はあったが…
あえて聞かないでおく事にしたアレンだった。
「すっかり寒くなりましたねー。」
「そうですね。」
数時間後――仕事を終えて、何時もの様にリンクはアレンを自宅まで送っていた。
「もうじきすると、書き入れ時になりますから忙しくなりますよ。」
「あ、そっか――クリスマスがありますね。」
リンクの言葉に"ポン"とアレンは手を打つ――そんなアレンを見ながらリンクはゆっくりと歩く。
「でも、今日は残念だったなぁ。」
「何でですか?」
アレンの言葉にリンクは首を傾げる――はて、今日はアレンが気を落とす様な事があっただろうか?
「だって――折角、リンクに悪戯しようと考えてたのに!」
「――ウォーカー…。」
アレンの言葉に"ガクッ"とリンクは肩を落とす――が、ココでめげてる場合ではない。
「そんな事を言うのならこれはいらない様ですね。」
「え――?あっ!!」
リンクがそう言ってアレンの目の前に箱を差し出せば、中身を察したアレンは声を上げる。
「――折角、君の為に焼いたパンプキン・パイでしたが…。」
「わー!いります、いりますってば!!」
意地悪くリンクがそう言うと、その先を遮る様にアレンは叫んだ――それを聞いてリンクは素直にアレンに箱を渡した。
「ヒドイですよ、リンク!」
「すみません、つい。」
"ぷう"と頬を膨らませるアレンにリンクは思わず笑みを浮かべてしまう。
そんなこんなしている内に、アレンの家の前に到着した。
「それじゃあ、おやすみなさい」
「あ――待って下さい、リンク。」
そう言って帰ろうとした所、アレンに腕を引っ張られたので振り返ると――。
――ちゅ。
「へ…?」
「おやすみなさいっ」
唇に感じた柔さに呆然とするリンクに、アレンはそう言ってそそくさと家の中に入ってしまった。
(え、待って下さい――今のって…!!)
先程唇に感じたものが何なのか自覚したリンクは顔を真っ赤に染め上げたのだった。
――甘い、甘い、可愛い魔女のイタズラに引っ掛かったのは、甘党の生真面目な狼男。
End.
Title:『Fortune Fate』/執筆中BGM:『魔弾〜Der Freischütz〜』