キミはボクが好きですか?



「――どうして僕を抱いてくれないの?」
その言葉を聞いた瞬間、思考が固まった。

「――はい…?」
「だからっ…"どうして僕を抱いてくれないの"って言ったんです!」
言葉が理解できなくてリンクが呆けた声を出すと、当のアレンは"グッ"と唇を噛み締めながらそう叫んだ。

今日は12月29日――先日の宣言(クリスマスSSを参照)の通り…リンクとアレンはリンクの家で一緒に過ごしていた。
年末なので外に出る事はなかったが…色んな事を話したり、くっついたり…と恋人らしい一時を過ごした。
そして――寝る段取りになった頃、アレンが思い詰めた表情で冒頭の台詞を言ったのだ。

黙ったままのリンクにアレンの中で何かが切れたらしく…銀灰色の目から"ポロポロ"と涙が零れ落ち始めた。
「やっぱり…僕には"そういう事"をする気にはなれないって事ですか…?」
「?!そ、そんな事ある訳ないでしょう!!」
"ポロポロ"と泣きながらそんな事を言うアレンに、漸く事の次第を理解したリンクは声を荒らげた――そんな事思う訳がないのに!!
「っ、ひっく…じゃ、なんで…?」
「そ、それは…――。」
泣きじゃくるアレンの涙を拭っていると再びそう言われ、リンクは言葉に詰まってしまう――が、このままだと更に余計な誤解を招く気がしたので
意を決して言う事にした。
「あのですね、ウォーカー…私が君を、その…抱かなかったのは、ですね…。」
「――うん…」
漸く理由を話し始めたリンクの顔をアレンは真剣に見つめる――が続く言葉は、アレンにとって意外なものだった。

「――君を壊しそうで怖いんです…。」

「ふぇ…?」
「だから――"君を壊しそうで怖い"と言ったんです…」
先程とは逆に呆けた声を出すアレンに、リンクは顔を赤くしそう答えた――嗚呼、だから言いたくなかったというのに!!
そう――リンクがアレンを抱こうとしなかったのは…"壊しそうで怖い"と言う理由からだった。
元々生真面目な性格な上、恋愛初心者のリンクにとって…自分より華奢なアレンを"抱く"のは何だか壊しそうな感じがしたし…嫌われてしまいそうな気がして
怖かったのだ。
(――何だ、リンクは僕を大事にしてくれていただけだったんだ。)
漸く安心したアレンは、"ぎゅ"とリンクの背中に抱き着いた。
「ねぇ、リンク」
「…何です?」
抱き着いてくるアレンにリンクが些か拗ねた様な声で返事をすれば、アレンはこう言った。
「――僕はちょっとやそっとの事では壊れないし…大丈夫ですよ?」
「――ウォーカー…」
その言葉を聞いて――リンクはアレンをベッドに押し倒した。

「わっ――リンク?」
ベッドに押し倒されて驚いたアレンがリンクを見ると――薄らと熱の籠った目をしていたリンクが恐る恐る言う。

「――本当に…君を抱いても、いいんですか…?」
「――はい、いいですよ。」

リンクのその言葉にアレンが笑顔で答えると…リンクはアレンに深く熱烈に口付けた。

その後は――嵐の様な時間が過ぎるだけだった。

End.

Title:『Fortune Fate』/執筆中BGM:『HIDE & SEEK』、『I.D.〜LOVE ME CRAZY』、『I.D.E.A.〜僕は毎日、夢を見る〜』