(…だあああ、眠れん!!)
心の中でそう叫んで飛び起きた。
「狼になりたい」なんて言えない
只今――泣く子も寝静まる午前2時、所謂…丑三つ時――普段の三成なら
安眠真っ最中の時間の筈だが…この日ばかりは、些か事情が違った。
「――何故…私なのだ…。」
そう呟く三成の隣には、隣人兼…片想いの相手である――徳川家康が、スヤスヤと
眠っているからだ。
(――此方の気も知らないで…。)
暢気に寝息を立てている家康に、三成は内心で一人ごちる――一見、清廉潔白に
思える三成だが…一応は彼とて健全な男――好きな相手が側に居れば、それなりに
ドキドキするのだ。
(大概…いや、絶対に『男』として見られていない気がする…。)
そう思い溜息を吐いた所で、三成は寒さと尿意を感じ…背を震わせた。
(…トイレに行くか。)
家康を起こさない様に――三成はそっと、寝床を抜け出した。
――ジャー…
用を足し――洗面所で手を洗いながら、三成は思う…いっその事――『狼』になって
しまいたいと思うが…なってしまうと、様々な方面で信頼を失いかねないし
…何より――。
「――家康に嫌われるのだけは…。」
三成が何より恐れているのは――家康に嫌われる事なのだ、無論…養い親達の
信頼も無くなるのも三成は怖いのだが…。
「――はぁ…。」
色々な感情が自分の中でループしていくのを感じ…三成は重い溜息を吐くのだった。
寝床に戻って見ると――寒かったのか…家康は身を縮こめて寝ており、
起こさない様…その隣に三成は潜り込む。
色々考えて適度に頭を使った所為か…漸く眠気が来た三成は目を閉じた
その矢先――。
「――みつなりぃ…だぁ‥いすき‥ぃ…ふにゅ…。」
家康の口からとんでもない寝言が零れ落ちた――しかも…眠気交じりの独特の
甘い声で。
(き、きさま…な、なんのゆめをみてるんだぁああ――!!!!?)
うっかりその寝言を聞いてしまった三成の眠気は、完全に飛んでしまったのだった…。
結局――この日、ぐっすりと眠れた家康に対し…三成がほぼ一睡も
出来なかったのは…言うまでもない…。
End.
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