「――ヤりたい。」
その言葉に溜息を吐いた。

体の上に乗っかって



「あのなぁ…三成、ワシ疲れ――。」
「嫌だ、拒否は許さない。」
『暖簾に腕押し』とも言える三成の答えに、家康は再び溜息を吐く。
別に家康とて求められるのは、構わないのだ――寧ろ、悪くはない。
唯…こう頻繁と言うか――ぶっちゃけた話、連日求められるのは…流石にしんどいと
言うもので…。
「そんなに溜まってるんなら、花街にでも行けばいいだろ…?」
「――――。」
半ば投げやりな声色で家康が言えば、三成は思いっ切り眦を吊り上げた――
ぶっちゃけ傍から見たら、回れ右をして逃亡したくなる様な表情である。

「…だ。」
「え、悪い――聞こえなかった。」
暫くして――三成が小声で何か呟いたが…聞き取れなかった家康は、
再び三成に問い返すと――。

「だから…花街の女は――脆いんだ!!」
「…はい――?!!」

顔を赤くしながら叫んだ三成の予想外の回答に家康も叫んだが…同時にある事を
思い出した。

『――あたた…。』
『徳川よ、如何した?』
『刑部か…ちょっとな――。』
『――三成か…?』
『…分かっているなら、聞かないでくれ…。』
『しかし…此処まで溜まってるんなら――何で三成の奴、花街に行かないんだ…?』
『それか…主が来る少し前の話になるが…――聞くか?』
『ああ…聞かせてくれ。』
『手っ取り早く言うとな…彼奴は壊しかけたのよ、花街の女を。』
『…嘘だろ!?!!』
『真よ真――それ以来、太閤や軍師殿から『壊すなら花街に行くな!!』とキツク灸を
据えられてな…。』
『そ、そうだったのか…。』

――回想終了。

(ああ…そうだった…聞いていた筈なのに、すっかり忘れていた…。)
以前刑部に聞いた『それ』を完璧に思い出し…心の中で家康は嘆いた――てか何で、
今の今まで忘れたんだワシ!!!

――ガプッ。

「ひぃ?!こら、三成!!」
気を逸らしていた家康に腹を立てたのか…三成が家康の首筋をガプガプと
甘噛みしてきた。
「こら…本当にやめろ!!」
「―――…。」
色々耐えかねた家康が三成の首根っこを掴んで引き剥がせば…当の三成は
不服そうな表情を浮かべており、それを見た家康は…また溜息を吐いた。
「あのなぁ、三成――ワシだってお前とその…するのは別に嫌ではないんだ。」
「なら――。」
「でもな――流石にこうずっとだとワシの身体も持たないんだ、それだけは分かって
くれ…。」
「…分かった、今日はしない。」
家康は子供に根気強く言い聞かせる様に三成に言うと――一応は納得したのか、
三成は渋々ながらも引き下がった。

「じゃあ、ワシ寝るな。おやす――。」
「待て。」
寝ようとした矢先に三成に腕を掴まれた家康は身を硬くしたが、三成が何か
言いたそうにしているのに気が付いて家康は尋ねた。
「――何だ?」
「…共寝位はいいだろう?」
三成にとっての最大級の譲歩であろうその言葉を聞いた家康は、了承の意を
返したのだった。

――取り敢えずこの日…家康が安眠を得られたのは言うまでもない。

End.
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