ユサユサと揺られる感覚に、徐々に意識が覚醒する。
(…いったい、なんだ―――っ!!!!?)
目を開けてみると――ニコリと笑ううさぎがそこに居た。
C.ちゅ!
(ああ…そう言えば、居たんだった…。)
自分の上に乗っかっているうさぎに、三成は昨日の出来事を思い出す。
――昨日、気紛れで立ち寄ったペットショップで…余りの愛らしさに一目惚れして
購入したうさぎ――名を家康と言う。
社会人になってからずっと1人で生活して来た三成にとって『起こされる』と言う行為
自体、久し振りで…家康には申し訳無いが――一瞬、不法侵入者かと思って
しまった。
『…?』
「――おはよう…。」
そんな事も考えてるとは露知らず…首を傾げている家康にそう言ってやれば、家康はニパッと笑った。
取り敢えず――起床した三成は朝食の支度をする、これが自分1人なら準備など
しないのだが…流石に家康に食べさせない訳にもいかないので…急いで準備をする――
序でに自分にも軽めの朝食を。
自分にはトーストを…家康には専用の餌を用意して、テーブルに置き…揃って
席に着いた。
「いただきます。」
『――いただきます。』
手を合わせて三成が言えば、それに倣ってか…家康も手を合わせ唇を動かした。
「…美味いのか?」
黙々と餌を食べている家康に三成が尋ねると、家康は食べる手を休め…コクリと頷く。
「――そうか。」
そう言う三成に家康は小首を傾げながらも、再び食事に戻り…三成はそんな家康の
様子をジッと見つめていた。
食事を終えた三成はスーツに着替え…仕事に行く準備を整えた所で、家康にスーツの端を引っ張られた。
「おい――っ…。」
『何処に行くんだ…?』
「――仕事だ。」
うるうると潤んだ瞳で見上げられて、思わず言葉を失った三成だったが『仕事に行く』と
言えば…外へ出る意思は伝わったらしく家康の目が更に潤みを増した。
「…出来るだけ、早く戻る。」
『本当…?』
「――ああ…。」
ポムポムと頭を撫でながら慰める様に三成がそう言えば、家康はコクリと頷いた。
そんなこんなで――玄関のドアを開けた所で、再び家康にスーツを引っ張られ…
三成は溜息を吐きながらも振り返る。
「今度はなん―――。」
流石に『少し怒らないと駄目だろう』と思いながら振り返って見ると、予想以上に
家康の顔が近くて驚いた――が、段々と家康の顔が近付いてくる。
『あれ?』と思っていると頬に何か柔らかい物が当たって、三成は驚きの余り目を
見開いた。
――んちゅ。
『――いってらっしゃい。』
そんな三成を余所に…可愛らしいリップ音と共に離れた家康の唇が、確かに
そう動いたのが見えた。
暫し呆然としていた三成だったが…家康が何をしたか理解すると、まるで茹蛸の様に顔を真っ赤に染め上げたのだった。
因みに――フラフラになって出勤してきた三成に、同僚達が好奇の目を向けたのは…
言うまでもない。
End.
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Title:『
TOY』
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