(…喉が渇いた。)
そう思いながら三成はのそりと起き上がった。
O.お腹すいた
枕元に置いてあった水の入っている竹筒の蓋を開け、水を一気に煽るが…渇きは
納まらない。
それもその筈――三成は人間ではない、血を吸う妖(あやかし)…外の国では
『吸血鬼』と呼ばれる存在だった。
(くそ…っ!!)
三成は苛立ちで頭を掻き毟りながら内心一人ごちる――基本、三成は戦場で血を
啜り、渇きを癒しているが…この1月程は小競り合いも反乱もなく…実に平穏とも
言える日々だった為、血を啜る事すら出来なかった。
(――こうしていても、仕方が無い…。)
取り敢えず気分転換もかねて頭を冷やそうと、部屋の襖を開けたその瞬間――。
――フワリ。
(?!何だ、この香りは――!!)
冷えた空気に混じって届いた甘い香りに、三成は目を見開いた――こんな極上とも
言える香り、今までに嗅いだ事がない。
(…っ。)
その香りに喉を一つ鳴らした三成は、香りがする方向へ足を進めた――但し、若干
顔を顰めながら。
(――やはり、コイツの部屋だったか…。)
辿り着いた部屋の襖を開けた三成は、重い溜息を吐いた――何故なら…辿り着いた
部屋は三成が苦手としている、三河の女国主…徳川家康の部屋だったからだ。
(…此処でこうしている訳にも行くまい…。)
心の中でそう呟いて、三成は気配を殺し…家康の部屋に足を踏み入れた。
「――すー…すー…。」
(…暢気なものだな)
健やかな寝息を立てて眠っている家康に圧し掛かりながら、三成はそう思うと同時に喉の渇きが酷くなるのを感じる。
部屋に入った途端に濃くなった香りに、三成の渇きは既に限界に達していた。
(――っ、いただきます…。)
心の中でそう呟いて、三成は家康の首元にその長い犬歯を立てた。
「いっ―――?!!!?!!」
突如襲った激烈とも言える痛みに家康が目を覚ましてみると、何と自分の首元に
同僚が噛み付いているではないか。
「おい、三成!!?お前、何し――!!」
兎に角――引き剥がそうと家康は咄嗟に三成が着ている着流しの後襟を掴むが、
その瞬間…三成の犬歯が更に食い込んだ。
「いぎっ!!?!!」
余りの痛みに流石に我慢強い家康も苦痛の声を上げ、襟を掴んでいた手の力も
緩んでしまった。
そして恐る恐る三成を見て見ると、『抵抗するな――すると、このまま食い千切るぞ』と
目で言っており…その目の色から本気を悟った家康は抵抗を止め…それを見た
三成は、改めて家康の血を啜った。
(――甘い…っ)
啜った血の何と甘く芳しい事か――一気にその味の虜になった三成は、夢中で
家康の血を啜る。
「…みつなり、やだ、やめてくれ…」
突然のの暴挙と血を吸われる恐怖で家康はボロボロと涙を零しながら、三成に
懇願する――が、それに構う事無く…三成は家康の血を啜っていく。
止めてくれない三成に、家康は気力を振り絞って…もう1度三成を引き剥がそうと襟を
掴んでいる手に力を入れるが――。
(――あ?!な、なんで…!!?!)
身体の奥から何かが溢れる様な感覚に、家康は足をバタつかせた。
(…?もしや――。)
突然足をバタつかせだした家康に三成は内心で首を傾げた――が、ある事に思い
当たって…家康の下半身に手を伸ばした。
「ぅあっ――!」
(…やはりか。)
濡れた感触に三成は内心で薄く笑みを刷く――これを愉快と言わず何と言おう、
感じたのだこの女は、自分に血を吸われながら!!!
身の内に生まれた衝動のままに三成は、家康の濡れた蜜口を弄りだした。
「ぃあっ?!!?みつ、あぁ!!」
(――そうだ、もっと啼け…っ!!)
蜜口を弄られて戸惑いの声を上げる家康に、三成はゾクゾクと背を震わせる――
気分が良かった、常ににこやかに笑顔を振りまいているこの女も…結局は唯の
『人』なのだ。
そんな事を思いながら、三成は一際強く家康の蜜口を弄った。
「ひぃ――ぅああああ!!」
家康は悲鳴を上げながら果て…血を吸われた事による貧血と達した事による
疲労感で、そのまま気を失った。
襟を掴んでいた手がずり落ちた感覚に、三成は家康を見遣ると――顔を青褪め
させて、完全に気を失っており…三成は慌てて傷を塞ぎ、脈と呼吸を確認すると…
脈も呼吸もしっかりとしており、ホッと溜息を吐いた。
(…あ、まずい…。)
渇きが癒えた事で中途半端に目が覚めていた三成に眠気が戻ってきた――部屋に
戻らなければと思うが…余りにも凄まじい眠気だった為、部屋に戻る事を諦めて、
三成は家康の隣に転がった。
(――美味かったぞ、家康…。)
三成は心の中でそう呟き…気絶した家康を抱き締めて、睡魔に身を委ねた。
End.
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Title:『
TOY』
/Template:『
Spica』
執筆中BGM:『ワールズエンド・ダンスホール』
オマケ(と言う名の会話文)。
(うぅ…何だ、頭が重い…)
「何でこんなに頭が重た――って、うわあぁああああ!!!?!!」
「…朝っぱらから煩いぞ、家康。」
「な、何で三成がワシの部屋に居るんだ?!!!?」
「ああ…それか、昨夜貴様の血を啜った後にそのまま寝たからだ。」
「――ちょい待ち、今何言った…?」
「そのまま貴様の隣で寝た――」 「その前だ!!!」
「…貴様の血を啜った――か?」
「そうだ――!!と言うか、まさか昨夜のアレは…夢じゃなくて――。」
「――現実だ、と言う訳でもう1度貴様の血を吸わせろ。」
「―――――。」
――バタン、キュ〜。
「おい、家康?!――失神したのか、まあいい…。」
――これからも、貴様の血を頂いて行く…覚悟しておけ。
(…誰か、嘘だと言ってくれ…。)
End.