(ああ…もう直ぐバレンタインか。)
華やぐ売り場を見つめながらそう思った。

乙女心と蜂蜜お月様


(今年も何時も通りかな…秀吉公と半兵衛と――)
華やぐ売り場でチョコレートを見ながら、家康はチョコレートを贈る人物をリストアップ
していく。
あの後見人コンビは――かわいい家康から貰える物なら、何でも喜ぶであろう。
(後は――ッ!!)
そこまで考えた瞬間――脳裏に過ぎった顔に、家康は顔を赤く染めた。

(あわわ…わ、ワシは何を…!!)
ぶんぶんと頭を振りながら、家康は脳裏に過ぎった人物を消そうとするが…頬の熱は
中々引いてくれない。
(そりゃ、ワシだって――三成は好きだが…。)
そんな事を思いながら、家康は溜息を吐く――そう、家康の脳裏に過ぎったのは、
お隣さんである、石田三成の顔だった。
そう――家康は三成が好きだった、最初は出会いの所為もあって…
『ちょっと怖いなぁ』と思っていたが…次第に人柄に触れていく内に、
自然と好きになって行った。

「でも…アイツ、女嫌いみたいだしなぁ…」
そう呟いて家康は溜息を吐く――家康の知る限り、三成は対人関係が希薄――と
言うより特に女そのものが嫌いの様であった。
以前――三成への告白現場を目撃してしまった時、三成は――。
『貴様なぞ知らん――と言う訳で、さっさと去れ。』
と――キツイ(酷い)一言を相手に言って、その場から立ち去っているのだ…うっかり
それを聞いた家康は『幾ら何でもその断り方はダメだろう…』と思った――但し、直接本人に言う愚は流石に犯さなかったが。

そんな事もあり――家康は三成に告白もせず…静かに想い続けていた。
でも…季節は折りしも、バレンタイン間近――折角の恋する女の子の為のこの日を、
活かさずに何とする!!

(よし――もうダメ元でもいいから、三成に告白しよう…!!)

そう決心した家康は――手作りチョコレートに必要な材料を買い物カゴに入れて、
レジへと向かった。

その顔は――眼鏡の所為もあり傍からは分かり辛かったが…頬を赤く染めた、
典型的な恋する乙女の顔だった。

End.
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