「――家康君のお味は、どうだった?」
尊敬する上司兼――家族にそう言われて、飲んでいた茶を吹き出した。
師匠と弟子の問答無用
「――は、はんべえさま…?」
「あれ?違ったの?」
余りのショックに固まっている三成を余所に、半兵衛は笑みを浮かべ…のほほんと
そう言う――傍から見たら天使な笑顔で。
「な、何て事仰るんですか?!!?」
何とかショックから回復した三成は、顔を真っ赤に染めて叫び――そんなある意味、
可愛らしい反応をする三成に、半兵衛はクスクスと笑いながらこう言った。
「だって――三成君…君、幸せそうな顔してる上に、背中庇っているし…第一、項の
キスマーク、バッチリ見えてるしね」
半兵衛のその言葉を聞いた瞬間――三成は真っ白になり、机の上に撃沈した…
それはもう見事に。
(た、たしかに…背中には家康に付けられた爪痕はある――と言うか、キスマークが
見えてるって…一体何時付けたんだ、家康ぅうう!!?!!)
撃沈している中――三成の脳裏にはそんな事が過ぎっていたが…1つ気になる
事があった。
「あの、半兵衛様…1つお尋ねしたいのですが――。」
「何だい、三成君?」
机から顔を上げた三成は、恐る恐ると言った感じで…未だ笑顔の半兵衛に
こう尋ねた。
「その――私は…幸せそうな顔をしていたでしょうか…?」
「うん――とっても幸せそうな顔してたよ。」
自信無さ気に尋ねて来た三成に、半兵衛は笑顔でそう答えてやると――三成は
若干困惑した表情を浮かべながら、再び仕事に戻った。
(ふふ…さっきの君は本当に幸せそうな顔をしていたよ、三成君。)
困惑しながらも仕事をしている三成を見ながら、半兵衛は本気でそう思う…家族の
―例え血は繋がっていなくとも―幸せを願わない者が何処に居るだろうか。
(――お祝いしてあげなきゃ。)
そんな事を考えながら…半兵衛は台所に向かい、本日のお茶請けの準備を
開始した。
因みに――この日のお茶請けが、『赤飯のお握り』だった上に、更に半兵衛と
秀吉からの追及を受けた三成が、本気で泣きたくなったのは…言うまでも無い。
End.
back