(ああ、どうしよう…)
――本気で頭を抱えたくなった。

ショコラとブランの動悸は続く


(一体どれにすればいいんだ…)
様々な雑誌に囲まれた中、三成は溜息を吐いた――何故なら…未だに
ホワイトデーのお返し…もとい家康へのプレゼントが決まらないからだ。
(どれも似たり寄ったりで、――)
パラパラと雑誌を捲りながら、三成はそう思う――折角だから、印象に残る物を家康に
プレゼントしてやりたいと思い…こうして普段は見ない雑誌やカタログを
見ているのだが…どうにもピンと来る物が無いのである。
(あぁ…私はあれだけのプレゼントを貰ったと言うのに…)
バレンタインの1件を思い出し、三成は溜息を吐いた――あれだけの愛情の篭った
プレゼント(手作りチョコ+α)を貰った手前…ありきたりなプレゼントを贈る事は、三成の
矜持に懸けて出来ない事だった。
(…こうしていても仕様が無い、か。)
三成は徐に立ち上がり、外出の準備をし…そして外に出た――目指すは、郊外の
大型複合店である。

大型複合店に到着した三成は、様々な店を見て回る――が、それなりにいい品物は
あるのだが…三成が『これだ』と思う物は、中々見つからなかった。
(ふむ…中々見つからない物だな…)
そう思いながらふと、目を横に向けてみれば…其処には、アクセサリーショップが
あった。
(そう言えば――…。)
その店を見ながら、三成は――この複合店に来る前に、友人と保護者からの助言を
思い出す…因みに、その内容は――。

『ホワイトデーのお返し?――そりゃあ、アクセサリー系が良いんじゃない?』

と――3人が3人とも似た様な答えだった。

(…少し見ていくか。)
そんなありがたい(ある意味御節介)アドバイスを思い出した三成は、アクセサリー
ショップに足を踏み入れた。

(ほう…色々とあるんだな。)
店の中に入り、色々物色してみると――先程見て回った店とは違い…様々な
ジャンルのアクセサリーが展示されており、余りこういった物に興味の無い三成だが…
『ここなら、いいプレゼントが見つかるかもしれない』と熱心に見て回る。
(あ…)
すると――目の前にようやっと三成の御眼鏡に適う物が見つかった。

「すまないが…――。」

近くに居た店員を呼び…三成はようやっと御眼鏡に適った『それ』を購入したの
だった。

「――あれ?三成、」
「…少しいいか?」
「?――もちろんいいぞ。」
あれから直ぐに帰宅した三成が、家康の部屋に向かうと…当の家康は
首を傾げながらも三成を笑顔で部屋に上げてくれた。そんな家康の笑顔にホッと
しながらも…三成はドキドキしながら部屋の奥へと向かう。
「所で何の用なんだ?」
「ああ――少し目を瞑って背中をこちらに向けてくれないか…?」
「いいぞ?」
そう尋ねて来た家康に三成がそう言うと…家康は素直に背中を三成の方へ向け――その向けられた背中に三成は近付き、購入してきた『それ』を家康の首に着けた。
「みつなり?」
「…もういいぞ。」
不思議そうな声色で己を呼ぶ家康に、三成はそう言って近くにあった手鏡を家康に
渡し、家康が鏡を覗き込んで見ると――。
「あ…三成、これ――。」
「――バレンタインのお返し…だ。」
己の首に着けられた『それ』に気付いた家康が気付き、三成の方を見て見ると…当の
三成は、耳まで真っ赤にして俯いていた。

三成が購入したホワイトデーのプレゼントとは――ハートを模したチャームに鍵穴が
付いたチョーカーだった。

「…三成。」
「な、何だ?」
声を掛けられて三成が俯けていた顔を上げると、家康は満面の笑顔でこう言った。

「――ありがとう!」

その笑顔を見て――三成は『お返しをしてよかった』と心底から思ったのだった。

End.
Title:『Fortune Fate』/Template:『Spica
執筆中BGM:『Gamble Rumble』