「うわぁああ――!!退いてくれぇえええ!!!」
聞こえてきた悲鳴に、三成がふと上を見上げれば――階段から人が落っこちてきた。

無自覚なスタートライン


――ゴチーン!!

「いたた…貴様ぁ!一体何処、み、て――」
「わぁ――ご、ゴメンなさい!!」
激突した拍子に打った頭を擦りながら、三成がドスを効かせた声でそう言えば――
目の前の人間―因みに女だった―は慌てて謝ったが…その言葉は三成の耳には
届く事はなかった、何故なら…。
(な、ななな…!!)
――女の顔を見た三成が思いっ切り動揺していたからだ。
目の前で謝っている女をよくよく観察してみれば――パッチリな団栗眼に、
ぽってりとした唇、均整の取れた体――ぶっちゃけた話…目の前に居る女は三成の好みドストライクだった。

「あわわ…メガネ、メガネ――。」
その声に我に返った三成が周囲を見回すと、自分の手元に女の探し物であろう
分厚いレンズの眼鏡があった――恐らくぶつかった衝撃で、飛んでしまったのだろう。
「おい、これか…?」
「――あ、ワシのメガネ!!」
三成が眼鏡を差し出せば、先程まで焦っていた女の表情が綻んだ――差し出された
眼鏡を受け取った女が、急いで眼鏡を掛けると…パッチリとした目は分厚いレンズに
隠れてしまった。
(あ、もったいない…)
レンズで隠れてしまった目に、三成は内心そう思った――いや、本当に冗談抜きで。
そんな事を考えていると、次の講義を告げるチャイムの音が聞こえてきた。
「あ…ほ、本当にすまない!!」
「あ、おい!!」
チャイムの音で慌てて立ち上がった女に、三成は声を掛けたが…女はダッシュで
その場から走り去ってしまった。

どうやら次の講義を取っていたらしい女の慌てっぷりに、暫し呆然としていた
三成だったが…―序でに言うと三成はこの後講義は無い―何時までもそうしている
訳には行かず、廊下に散らばっている自分の教本を拾おうとする――と、先程まで
女が居た所に、何かが落ちていた。
「何だ…?」
三成は落ちているそれを拾って見る――すると、それは女の学生証だった。
(――徳川、家康…か。)
学生証に刻まれている名前を、三成は確りと頭に刻み込んだ。
「――しかし、どうするか…」
三成は学生証を見ながら呟く――拾ったはいいが、当の家康は講義中の様だし…
しかもどう言う訳か今日に限って…友人の居る事務局は諸事情で閉まっているのだ。
「――仕方ないか…」
溜息を吐いた三成は、自分のパスケースに家康の学生証を仕舞い込んだ、事務局が
休みである以上――自分が預かるしかないのだと思いながら、三成は自宅へと
戻る事にしたのだった。

しかし――この2人、意外にも早く、そして意外な所で再会したのだが…それはまた
別の話である。

To Be Continued…?
Title:『Fortune Fate』/Template:『Spica
執筆中BGM:『I.D.~LOVE ME CRAZY~』