YOU GET TO BURNING
笑って欲しい。君らしく、愛らしく。
「――はぁ……。」
バイト先のファミレスで溜息を吐くのは、健太である。
ここ最近、彼の心理状態は――本人にとっては、結構切羽詰まっていたりする…。
『――どーしよう…。』
――この一言に凝縮されていた…その理由は『家計が苦しい』とか、そう言う類ではない。
『恋愛感情を持て余している』と言う、青少年独特の理由であった。
「雨水君?」
ボーっとしていた所に聞こえた声――健太は思いっ切り、肩を強張らせた。
思わずバッと振り返ると、そこに居たのは――果林だった。
「ご、ゴメン、驚かせちゃった…?」
「あ…い、いや、そうじゃないんだ。」
肩を強張らせた健太に、驚いた果林は…恐る恐る話し掛けたが――それを見て健太は、そう答えた。
「でも、どうかしたの?ボーっとしてたけど…。」
何処か赤い健太の顔を、果林は心配そうに問い掛けた。
「な、何でもないんだ!!」
心配そうな顔をした果林に、健太は思わずそう答えて、自分の持ち場に戻った。
「―――どうしたんだろう…?」
1人取り残された果林は、思わずそう呟いた。
「や…やばかった…。」
自分の持ち場に戻った健太は、溜息を吐きながら、そう呟いた。
確かに――自分は、真紅の事を悪くは思ってはいない。寧ろ、好感を感じてはいるが…――。
「本当に…どうしたら…。」
――どうしたら…あの笑顔が見れるのだろう――。
そう思うと…やはり溜息しか出てこない、健太であった。
仕事が終わり、何時もの様に一緒に帰っていると――。
「ねぇ、雨水君。」
「どうしたんだよ、真紅。」
仕事中の健太の様子が気になっていた果林は、健太に話し掛け…
健太も落ち着いた様子で、果林に話し掛けた。
「何か、気にしてる事でもあるの?」
少しだけ健太の顔を覗き込みながら、果林は尋ねた。
「え…あ、その…。」
いきなり核心を突かれて、健太は思わずドモってしまった。
「あ、あの…言いたくなかったら、良いんだよ?」
そんな健太を見て、少しだけ果林は胸が痛んだ様な表情を浮かべた。
「あ、そうじゃないんだ!!只…。」
そんな果林を見て、健太はそう答えた。
「?」
「只…最近、真紅の嬉しそうな顔を…見てないって、思って…。」
健太は真っ赤になりながら、果林にそう答えた。
「そ、そうだったの…?」
同じく果林も、真っ赤になりながらそう答えた。
「か、帰ろうか…真紅。」
「うん…帰ろっか…。」
気恥ずかしさから、お互いに俯きながら、帰路についた
「ね、ねぇ、雨水君…。」
「な、何だ…?」
未だ気恥ずかしさから、2人とも俯いたまま、互いに話し掛けた。
「その…凄く嬉しかったよ?」
――あたしの嬉しそうな顔、見たいって…。――
そう言って果林は、とびっきりの笑顔を浮かべた。
「―――っ!!」
その笑顔を見て健太は、一気に顔を赤くし…そそくさと早歩きで行ってしまった。
「え、雨水君!?待ってよ〜!!」
先に行ってしまった健太を、果林は叫びながら追い掛けていった。
早歩きで家へ向かっていた健太は、果林が追って来ているとは露知らず、顔を赤くしたまま――
「――反則だろ、あれは…。」
と…複雑な顔をして、そう呟いた。
笑って欲しい。君らしく、愛らしく。
君が、幸せに笑う事を夢に見ている。だから――君が笑う時は、ずっと傍にいるから。
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