三者三様の叫び



Side Barnaby Brooks Jr.(PIN UP LADY)/Side Karina Lyle(ANGELUS-アンジェラス-)/
Side Kaede Kaburagi(ピンクと呪文)



Side Barnaby Brooks Jr. (PIN UP LADY)



その日――僕は何時も通りに仕事をしていました。

只…今日の仕事で相手役のモデルが遅刻して、進行に影響がでた事に関しては
ぶっちゃけ腹が立ちました(だって遅刻の理由が"男絡みのスキャンダル"だった)。
遅れた時間を取り戻すかの様に、ハイペースで仕事が進んでいく中…ようやっと
休憩の時間になって、僕は漸く一息吐く為――誂えられた休憩用のブースに向かいました
(あ、序に相手役のモデルがしつこく言い寄って来たのでさり気無く"嫌味"を言って追い返しましたけど。)
そして――椅子に座って、テーブルの上に置いてあった雑誌を何気なく捲ると――。

「なっ――?!!?!!」

目に入ってきたその"写真"に、僕は思いっ切り目を見開いた――普段なら見逃すであろう化粧品の広告。
でも…今回はそう出来なかった、何故なら――。

(ちょ、ちょっとまって――まさか、これ――?!!!?)

"そこ"に写っていたのは…長い黒髪(ブルネット)を高い位置で結い上げて、ちょっと変わったデザインの艶やかな着物を
着て…琥珀の目を物鬱気に細めている…自分の相棒だったからだ。

「――そのモデルさん、綺麗ですよねー。この撮影に私の友達がメイクスタッフで参加してて…
仕事の後、すっごい興奮した様子で電話して来たんですけど…って、バーナビーさん??!!」

余りに雑誌をガン見している僕を不思議に思ったスタッフが、僕に声を掛けてきたが…そんな事も知らず
僕はテーブルに突っ伏してしまいました、顔を真っ赤にさせて…。

(――一体全体、これはどういう事?!?!と言うか…)



Side Karina Lyle (ANGELUS-アンジェラス-)



その日――私は放課後、友達と一緒に化粧品を見に行ったの。

こないだジェーン達が化粧品の広告を見て『これ一緒に予約に行かない?!!』とすっごく興奮した様子であたしを誘ってきた。
"珍しい事もあるなぁ"と思って理由を聞いてみると…『広告のモデルが滅茶苦茶綺麗だった』と言う。
このブランドの化粧品は、自分も多少興味はあったが…まだ買いに行けてはいない――因みにその理由は…値段が"イイ"から
(一応お給料は貰っているけど"学生のバイト料"じゃ結構キツイのよね…)。
今回の商品はテーマが"子供も大人も関係無い、背伸びした色気"と言う事もあり、"ちょっと背伸びをしてみたい…"と
年頃の好奇心も相成って、私はその化粧品を予約する事にした。
お店に到着して、私達が予約シートに必要項目を記入し終わると…店員さんが『特典でポスターが付きますけど、どうしますか?』と
窺ってきたので、私は『どんなのですか?』と尋ねると…店員さんは宣伝用のポスターを持ってきてくれて、それを見せてくれた。

「――?!?!?!?!!!!」

"それ"を見た瞬間、私は目を見開いて息を呑んだ――だって、だって、だってぇぇえええええ!!!

"そこ"に写っていたのは…長い黒髪(ブルネット)を高い位置で結い上げて、ちょっと変わったデザインの艶やかな着物を
着て…琥珀の目を物鬱気に細めている…同僚――もとい、自分の好きな人だったから。

「カリーナ…?」 「お客様…?」

ポスターを見たまま固まってしまった私に、友人と店員さんが声を掛けてきたが…私はゆでダコの様に顔を赤くさせて
ポスターを見つめていた。

(ポスター?ちゃんと貰う事にしたわよ!…でも、でも、でも――!!!!!!)



Side Kaede Kaburagi (ピンクと呪文)



その日――私が"それ"を見たのは本当に偶然でした。

何時もの様に学校に行ってみると、同級生の女の子達が雑誌片手にお喋りしていました。
なので私は『おはよう』と声を掛けて『何を見てるの?』と尋ねました――私は何時もの様に皆バーナビーの写真を
見ていると思ったけど…見せられた"それ"に私は本当に驚きました。

「えぇええええええ――――?!?!!!!!?」

見せられた"それ"に写っていたのは…長い黒髪(ブルネット)を高い位置で結い上げて、ちょっと変わったデザインの艶やかな着物を
着て…琥珀の目を物鬱気に細めている…ぶっちゃけて言ってしまうとその写真のモデルは女装している父親だったからだ。

「ねえ、そのモデルさん…もしかして楓ちゃんの知り合いなの…?!」

思わず声を上げてしまった私に、女の子達は興奮した様子で話し掛けてきたけど…私はそれ所ではなく、
色んな意味で衝撃を受けてしまって…そのまま机の上に思いっ切り"ゴチーン!!"と音がする程頭を突っ伏してしまいました…
(あ、勿論後で保健室に行きました)。

(ねえ、何があったの?!?!!!って言うか…)



3人の心の叫びは――。

「どういう事なんですかッ、虎徹さん――??!??!?!!」
「どういう事なのよっ、タイガーぁあああああ!!?!?!?!!」
「どういう事なのッ、お父さんーーーー!!!!!?!?!!!」

の一言に尽きるのだった…。

End.

Side Chapter Title:『Web of moon』/Template:『Spica
執筆中BGM:『バクチ・ダンサー』、『ピンクと呪文』