第2話
號斗丸(ゴッドマル)が烈帝城を抜け出して、丸1日が経過した。
烈帝城では、上から下への大騒ぎになっていた。
「ああーーー!!何処に行ったんだ!!アイツは〜〜!!?」
「大将軍様〜〜;;落ち着いて下さい〜〜;;」
1人の武者が、大将軍を落ち着かせようと必死である。
「轟天殿!!これが落ち着いていられますか?!」
そう。新世大将軍を落ち着かせようと必死になっているのは、彼の右腕である、将頑駄無の『轟天頑駄無』である。
昨日からこの状態が、ずーっと続いている為、轟天は、必死で新世大将軍を諫めながら、
『號斗丸よ・・・。早く戻ってきてくれ!!』
と、彼は、今この場に居ない號斗丸に、心の中で激しく叫んでいた。
そして、大騒ぎしている武者がもう1人・・・・・・。
「一体、何処に行ったんだ〜〜;;號斗丸〜〜;;」
と、部屋の中で激しく泣いている武者が1人。兄の飛駆鳥(ビクトリー)だ。
この様な状態が1日中続いたが故に、彼らは職務をこなす事が不可能になってしまった。
その頃。號斗丸の姿は、烈帝城がそびえ立っている『破悪民我夢(バーミンガム)の街』から
遠く離れた『恵亜須(エアーズ)の街』にあった。
「はぁ・・・・・・。やっと着いた〜〜;」
実は號斗丸。烈帝城を抜け出してから全速力でこの『恵亜須(エアーズ)』に向かっていた為、かなり疲れていた。
「やっぱり・・・・・・。体力落ちてる・・・・・・;。」
今まで、有り余るほどあった体力が確実に落ちてる。
「これが、『男』と『女』の違いか・・・・・・。」
溜め息を吐きながら、號斗丸は、1人呟いた。
だが、今はそんな事をとやかく言っている場合では無い。
『兎に角。今は、我が身の安全確保が第一だ!!』
と、即座に、思考を切り換えて、號斗丸は、駆け出しって行った。
向かった先は、幼い頃に自分がお世話になった武者とその弟子でもあり自分の一番の親友が居るから・・・・・・。
そう考えながら、號斗丸はその場所へ駆け出していった。
「〜〜♪♪」
鼻歌を歌いながら、メカを弄くっている武者が1人。
「師匠・・・。またやっていたんですか・・・・・・。」
その武者に呆れながら溜め息混じりに、言葉を発した武者が1人。
「ええやんけ〜〜。これがおれの趣味なんやし♪」
と、楽しそうに戯けた口調で、彼は言う。
「まあ。別におれは構いませんし。別に文句を言うつもりはありませんから。」
と、何処か投げ遣りな口調で、もう1人の武者は、言っている。
「ほぅ〜〜。そんな事を言うのは、この口かなぁ〜〜?」
先程までメカを弄くっていた武者は、笑いながら言っているが、目が笑っていない。
オマケにその手には、たっぷりと水の入っているバケツが握られている・・・・・・。
もう1人の武者はそれに気が付いたが、時既に遅し・・・・・・。バケツを持った武者はジリジリと近づいてきた。
「し、師匠、冗談は止めて下さい!!」
焦った顔と声で彼は、たっぷり水の入っているバケツを持った武者に必死に言っている。
「言うとくけどなぁ〜〜。冗談やないから♪」
と、バケツを持った武者はあっさりと言った。
「すいません!!おれ、どーしてもソレは怖いんで!!」
と、言い残し…もう1人の武者は逃げ出した。
「待たんかい!!コラァ!!」
と、バケツを持った武者は言い、バケツの中身を怖がって本気で逃げる武者を追いかけだした。
そして家の中で、2人の武者の激しい追いかけっこが始まった。
「待たんかい!!鋼丸(はがねまる)!!」
激しく怒鳴り散らしながら『師匠』と呼ばれた武者は、『鋼丸』を追いかける。
「イヤですーーー!!それに『待て』と言われて、待つ奴は居ませんよ!!師匠!!」
と、『鋼丸』と呼ばれた武者は必死に逃げる。
実は彼、極度の水嫌いである。理由は『鉄が錆びるから』と、何とも情けない理由である。
だが、その理由も本人に取っては大問題である。
それは、鋼丸自身が『鉄機武者』である為である。
『鉄機武者』とは『人造武者』である。また、『鉄機武者』は身体の大部分が鉄で構成されている。
それ故に、鋼丸は水が大嫌いなのだ。
それを知っている『師匠』は、バケツ片手に追いかけて来る。
そして追いかけっこは、この後信じられない事実を持って家に訪れる武者が来るまで続けられた。
『ドンドン!!』
「師匠。誰か来たみたいですよ?」
「何や?誰やろ?」
と、追いかけっこを中断して『師匠』と鋼丸は、玄関の方へ足を向けた。
『ハイハイ、今出ます。』
そして、玄関を開けて見ると訪ねてきた人物は、自分達もよく見知っている顔だった。
「何や。舞威丸(ブイマル)やないか。久しぶりやなぁ」(※『舞威丸』は、號斗丸の幼名です。)
嬉しそうに、號斗丸に再開の挨拶を言う鋼丸の『師匠』。
「お久しぶりです、爆流。」
と、號斗丸は鋼丸の師匠でもあり、自分に『炎水の珠』を譲ってくれた、超将軍の『爆流頑駄無』と挨拶を交わす。
「號斗丸じゃないか。一体どうしたんだ?」
と、親友でもある鋼丸は、不思議そうに號斗丸に問いかける。
すると、號斗丸は、非常に焦った顔でこう言った。
「頼む!!爆流、鋼丸!!暫くの間、おれを匿ってくれ!!」
『ハァ!!!!?』
余りにも、唐突な號斗丸のお願いに、爆流と鋼丸は揃って素っ頓狂な声を出した。
「お、オイ。舞威丸、一体どないしたんや?!」
「そ、そうだぞ?第一、仕事はどうするんだ!?」
流石に、2人共吃驚して、號斗丸に聞く。そしたら・・・・・・。
「詳しい事は、家の中で話す!!頼む!!おれを匿ってくれ〜〜;;」
と、悲痛な声が帰ってきた為、2人は號斗丸を家に入れてあげた。
そして、2人は家の中で、詳しい話を聞くことにした。
「一体ホンマにどないしたんや?親父さんとでも喧嘩でもしたんか?」
爆流は、『親子喧嘩でここに転がり込んだ』と思っていた。
「いや・・・・・・。そんなんじゃないんだ・・・・・・。」
爆流の予想は外れた。どうやら『親子喧嘩で転がり込んだ』と、思っていた様だ。
「じゃあ、兄弟喧嘩か?號斗丸。」
鋼丸の予想も『喧嘩』であった。
「いや、喧嘩じゃないんだ・・・・・・。」
と、號斗丸は答えた。
そう・・・・・・。理由は喧嘩じゃないのだ。
「なあ、2人共。今からおれが言う事を信じてくれるか?」
と、號斗丸は切り出した。
流石に、これには2人共戸惑ったが…理由を知るには、これしか無い為、2人共同意した。
「解った。お前は、嘘着かへんもんな。」
「そうだな。おれはおまえを信じるよ。號斗丸。」
と、今の號斗丸には、嬉しいお答えが帰ってきた。
「ありがとう〜〜;;実は・・・・・・。」
號斗丸は、昨日の朝の出来事を、全て話した。
朝起きたら、自分の身体が女になっていた事、そして、父と兄に見られる訳にもいかない為、
烈帝城を抜け出し、ここに来た事を・・・・・・。
全て話し終えた頃、爆流と鋼丸は硬直していた・・・・・・。
その為、號斗丸は2人に声をかけた。
「ば、爆流。それに、鋼丸、大丈夫か?」
2人共、號斗丸に声をかけられた事で、我に返った。
「ホンマか・・・・・・舞威丸・・・・・・?」
信じられない声で問いかける、爆流に対して號斗丸は
「ホントだって言っただろ!!だったら触ってみろよ、胸!!」
と、號斗丸は爆流の手を、自分の胸に持ってきた。
その感触に、爆流は目を見開いた・・・・・・。
「マジか・・・・・・?」
「だから言ってんじゃん。おれ・・・・・・。」
呆れた様に溜め息を吐きながら言う、號斗丸。
「師匠。大丈夫ですか?」
心配そうに、爆流の顔を覗き込んでいる、鋼丸。
爆流はそんな鋼丸の手をおもむろに掴んで、號斗丸の大事な場所に持っていった。
その感触に、鋼丸は再び凍り付いた・・・・・・。
「嘘・・・・・・。」
「だから、嘘じゃないって言ってるだろ。鋼丸・・・・・・。」
最早、諦めた口調で號斗丸は、鋼丸に言う。
状況をやっとの事で理解できた2人はある事に気が付いて、その事を號斗丸に問いただした。
「おい、舞威丸。1つ聞くんやけど、おまえ、暫くここに住むんか?」
「そう言えば、おれも気になっていたんだけど・・・・・・。」
と、真剣な表情で爆流と鋼丸は、その事を號斗丸に聞く。
「あ、ああ。そうだけど・・・・・・。何か問題でも?」
当の本人は、『キョトン』とした顔で聞いてくる。
だが、その顔が意外と可愛らしい物だったので、2人は一瞬、息を呑んだ。
「い、いや。何も問題はあらへんけど・・・・・・。」
「そ、そうだな。特段何にも無いが・・・・・・。」
流石に、さっきの不埒な感情を必死でごまかす男2人・・・・・・。
「それじゃあ、暫くの間、お世話になります。」
と、號斗丸は言った。
こうして、號斗丸は暫くの間、爆流の家に居候する事が決まった。
しかし、この生活が爆流と鋼丸の理性の戦いになる事は、未だ知る由もない・・・・・・。
そして、烈帝城では・・・・・・。
「ああーー!!何処に行ってしまったんだ、息子は〜〜!!」
「はぁ・・・・・・。駄目だこりゃ・・・・・・。」
「あう〜〜;;何処行っちゃったんだよ〜〜;;號斗丸〜〜;;」
結局、朝から、全く状況が変化していない状態だった・・・・・・。
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