第4話-その3-
飛駆鳥達が『恵亜須の街』を集中的に捜索してる頃…
號斗丸達3人の姿は『魔流連山(マルレーンざん)』にあった。
「つ、疲れた・・・。;;」
「お、同じく・・・。」
「裏道突っ走って、逃げて来ましたからね・・・。;;」
そう。この3人は捜索隊に見付からない様に、裏道を通って此処に来たのだ。
「でも。大分、時間を、取られたね〜・・・。」
號斗丸が、些か疲れた口調で、爆流に話しかけた。
「あ〜・・・。確かに時間はアレやけど、コレ位やったら、遅れは取り戻せるで?」
爆流はそう言った。
「しかし・・・。よく、こんな裏道、知ってましたね・・・。師匠。」
鋼丸は感心した様に、爆流に問い掛けた。
「コレか。昔は、色々と、狙われとった身、やったからな・・・。」
爆流は、懐かしそうに言った。
恐らくは『新生闇軍団』と戦っていた時を、思い出したのだろう。
「・・・。確かに・・・。」
號斗丸は、月を見ながら呟いた。
その横顔は月明かりに照らされて、不思議と綺麗に見えた。
その姿を見て、爆流と鋼丸は息を呑んだ・・・。
「・・・?2人共、どうしたんだ・・・?」
無言になった2人を見て、號斗丸は話し掛けた。
「あ・・・。な、何でもないで?」
「ああ・・・。だ、大丈夫だ・・・。」
2人共、必死に誤魔化した。
「それなら、良いんだけど・・・。」
號斗丸は苦笑しながら、2人に言った。
「さて・・・。そろそろ、出なアカンな・・・。朝までに、於雄得山に行けへんで?」
爆流は火の始末をしながら、號斗丸と鋼丸に、言った。
「あ〜・・・。そうだね・・・。」
「そうですね・・・。急ぎましょう。」
2人は、同意する様に立ち上がった。
この会話から30分後、號斗丸達3人は『魔流連山』を後にした。
その頃『新風林火山四天王』の4人は・・・。
「だ〜!!見付んね〜!!!」
「ホントに、何処に行ったンダ?!」
「一体、何処に行ってしまわれたんだ・・・?」
「皆・・・。口を動かす暇があったら、身体を動かそう・・・。後が怖いからな・・・。」
と、未だに『恵亜須の街』を捜索していた・・・。
そして・・・。朝・・・。
「よ、漸く、着いたで・・・。2人共・・・。;;」
「そ、そうだね・・・。俺、もう、クタクタ・・・。;;」
「お、同じく・・・。疲れました・・・。;;」
號斗丸達は『於雄得山』に到着していた。
何故、こんなに疲れているのかと言うと・・・。
山賊等に襲われて、無駄に体力を消費してしまったからだ。
「さてと・・・。もう少し、だけ、頑張ろか・・・。」
「そ、そだね・・・。;;」
「賛成〜・・・」
と、3人はその場を後にした。目的地までは、後僅かである・・・。
『シュッ、シュッ・・・。』
刀を研ぐ音が、静かな家に響く。
「う〜ん・・・。後、少しだけ、研いでおくか・・・。」
呟いたのは、超将軍の『荒鬼頑駄無』である。
再び刀を研ごうとした、その時・・・。
『ドン、ドン。』
と、戸を叩く音がしたので、玄関に向かった。
しかし・・・。コレが、彼の平和な日常を破壊する事になるとは・・・思いもしなかった・・・。
「はい。どちらさんですか?」
と、荒鬼は戸を開けた。
そして、其処に居た人物に目を見開いた。
「よっ!荒鬼、久しぶりやな〜。」
そんな荒鬼の心情をよそに、訪問者は暢気に挨拶をする。
「爆流?!何で、此処に、居るんだ?それに・・・。」
爆流の、後ろに居る2人を見ながら荒鬼は言った。
「あ〜・・・。此奴等については、後で話すから…家ん中、入れてくれ・・・。」
疲れ切った声で言うので、荒鬼は爆流達を家の中へ入れた。
「で?爆流。後ろの、2人は誰なんだ?」
荒鬼は、真っ先に尋ねた。
「ああ。此奴は鋼丸。俺の作った『鉄機武者』や。」
鋼丸を指差しながら、爆流はそう言った。
「初めまして、荒鬼殿。師匠がお世話になったそうで・・・。」
鋼丸は、礼儀正しく挨拶をする。
「いや・・・。こちらこそ、初めまして。鋼丸。」
荒鬼も、同じ様に挨拶を返した。
「なぁ・・・。爆流。もう1人は女性みたいだが・・・。」
荒鬼は疑問一杯の顔で、爆流に尋ねた。
「・・・。なぁ・・・。荒鬼、今から、俺の、言う事、信じてくれるか・・・?」
と、沈痛な面持ちで尋ねた・・・。
コレには、流石の荒鬼も・・・。
『かつて、共に戦った戦友が、こうも悩んでいる・・・。信じなければ・・・。』
と、心底そう思った。
「解った・・・。爆流。話してくれ・・・。」
荒鬼はこの戦友を信じる事を決め、話を聞く事に、した。
「解ったわ・・・この女は、舞威丸なんや・・・。」
と、號斗丸を指差しながら爆流は言った・・・。
「はぁ?!何を、言ってるんだ??!」
荒鬼は、声を張り上げた。
御尤もな反応だったので、爆流は號斗丸の胸に、荒鬼の手を押しつけた・・・。
「・・・。ウソだろ・・・?!」
手から伝わってくる感触に荒鬼は、目を見開いた・・・。
「ウソじゃないんだよな・・・。荒鬼・・・。」
と、號斗丸が荒鬼に現実を告げた・・・。
荒鬼は、顔を蒼くして・・・。
「ウソだろーー!!!!!」
と、於雄得山中に響き渡る様な、大声で叫んだ・・・。
因みに、彼が正気に戻ったのは、それから1時間も経過してからだった・・・。
正気に戻った所で、荒鬼は気になっていた事を爆流達に、聞いた。
「オイ・・・。まさか、此処に来た目的って・・・。」
当たって欲しくないと思うが・・・。
「そのまさかや。匿ってもらお、思て・・・。」
と、爆流は見事に望みを打ち砕いてくれた。
「あのな・・・。此処は、保護所じゃ無いんだぞ!!」
荒鬼は、声を荒げた。しかし・・・。
『ええ〜・・・。良いじゃん、少しなら・・・。』
と、3人は声を揃えて言った。
それに対して。荒鬼は・・・。
「ちっとも、良くない!!少しは、こっちの迷惑を考えてくれ!!!」
と、言い返した。
1時間程続いた、この不毛な言い争いは、號斗丸が条件を突きつけた事で終決した。
(因みに条件は、炊事洗濯の家事全般である・・・。)
「それじゃあ、暫く世話んなるで。荒鬼。」
「宜しく、お願いします。荒鬼殿。」
「暫く、お世話になります・・・。」
と、爆流達はそれぞれ改めて挨拶をした。
「ああ・・・。こちらこそ、宜しくな。」
苦笑しながら、荒鬼もまた返した。
しかし・・・。彼は知らない・・・。この生活が『自分の理性に挑戦!!』になる事を・・・。
今の彼は、全く持って知らなかった・・・。
そして・・・。『恵亜須の街』のとある宿では・・・。
「なぁ・・・。オイラ、思ったんだけどさ〜・・・。」
「何を、思ったノ?」
「『飛駆鳥様は、號斗丸を溺愛しすぎてないか?』でしょう?」
「そう・・・。何でこうまでして・・・。;;」
「友人だからミー達も、こうして探してるネ?」
「いや・・・。真紅主・・・。そうじゃなくて・・・。」
「要するに、親愛の域を完全に超しているんだろう?と言いたい訳だな?」
「そう・・・。じゃなきゃ、こんなに捜索隊とか使うか・・・?」
「普通だったらしないネ・・・。」
「確かに・・・。」
「使わないな・・・普通だったら・・・。」
「でも・・・。輝龍の意見には、私は同感しますね・・・。」
「・・・。ミーも・・・。」
「俺もだ・・・。その意見には・・・。」
「だよな・・・。幾ら何でも溺愛しすぎだ・・・。飛駆鳥様も大将軍様も・・・。」
『・・・御尤も・・・。』
と『新風林火山四天王』は今回の捜索活動について、この様に話していた・・・。
同時刻・・・。烈帝城では・・・。
『クシュン!!』
「・・・。風邪、引いたかな・・・?」
と、盛大にクシャミをする、飛駆鳥の姿が見られたそうな・・・。
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