第6話



號斗丸の姿が消えて1週間が経過し、騒ぎも少しばかり収まったある昼下がり・・・・・・。
伝書鳩が、烈帝城の忍び待機所に居るある武者の所へ訪れた・・・・・・。
「伝書鳩か?一体、何なんだ?」
その武者の容姿は忍びと言うより、騎士に近い容貌であった。
「誰からだろう・・・?あ、荒鬼からだ。」
どうやら、手紙の差出人がかつての戦友と解り、安堵の溜め息を吐いた。
そう。彼は超将軍の1人である『鉄斗羅頑駄無(テトラガンダム)』である。
「え〜〜と・・・・・・。何々・・・。」
鉄斗羅は、荒鬼からの手紙を読んで硬直した・・・・・・。
 
『久しぶりだな、鉄斗羅。いきなりで悪いのだが、『於雄得山(オオエヤマ)』に来て欲しい。
ちょっと、話したい事がある。出来るだけ内密に此方に来て欲しい。
因みに、他の超将軍にも、同じ手紙を出しているから、安心してくれ。
 
かつての戦友、荒鬼より』
 
「『内密に来い』って、一体何やらかしたんだ?!」
と、言いながらも…かつての戦友が悩みの相談を自分に持ち掛けているのだ。
『流石に、行かなければな・・・・・・。』と、内心で苦笑しながら他の武者に見付からずに、
鉄斗羅は烈帝城を出ていった。
 
基本的に、超将軍の行動は個人の自由である。頑駄無軍団に所属しながらも、
自由気ままに1人旅をしている超将軍も居る位だ。
それ故に、個人の意志が尊重されている。
 
そして鉄斗羅は『於雄得山(オオエヤマ)』に到着する迄に、妙な予感が過ぎったが、
『考えすぎだな・・・・・・。』と思い直した・・・。
しかし・・・。この『予感』が、当たっている事など、本人は未だ知る由も無い・・・・・・。
 
そして、此方でも・・・・・・。
「ああ?手紙か・・・。返事、書くの面倒臭いのに・・・って、荒鬼からじゃん。」
如何にも『面倒くさい〜〜。』と言う顔をしている、武者がここに1人。
超将軍の『天地頑駄無(テンチガンダム)』である。
「ああ〜〜。人の貴重な昼寝を、何で妨げるんだよ。」
『チッ』と、天地は舌打ちをして手紙を読み始めた。
 
手紙を読んで、数十分後・・・・・・。
天地はサッサと荷物の準備を整えて『於雄得山』に向かった。
『まぁ・・・。少し位なら、遊びで旅したっていいだろう。』と、天地は、楽観的に考えたのだ。
だが・・・。この考えが甘かった事を天地は『於雄得山』で知る事になる・・・・・・。
 
『於雄得山』からさほど離れていない、此方の山にも伝書鳩が来ていた。
「おや?手紙か・・・。珍しいたい。誰から・・・って、荒鬼からではないか。」
如何にも気の優しいと解る武者が1人。
超将軍の『獣王頑駄無(ジュウオウガンダム)』である。
「え〜〜と・・・何々・・・・・・。」
獣王は手紙を読み始めた・・・・・・。
そして・・・。手紙を読み終わった、獣王は『於雄得山』に向かう準備をしていた。
 
同時刻・・・。此方でも・・・・・・。
「荒鬼から、手紙ですか・・・・・・。珍しい事もありますね・・・。」(←端から見れば、慇懃無礼紙一重である。)
親切丁寧な言葉使いをする武者がここに1人。
超将軍の『雷鳴頑駄無(ライメイガンダム)』である。
「さて・・・。どういう内容なんですかね・・・。」
と、雷鳴は呟いて手紙を読み始めた・・・・・・。
そして、約30分後・・・。雷鳴は必要な物は全て揃えて『於雄得山』に向かった。
しかし・・・。雷鳴は『於雄得山』で『来なければ良かった・・・・・・。』と激しく後悔する事になるのは、
未だ本人は知る由もない・・・・・・。
 
そして・・・。『於雄得山』から遠く離れたある村では・・・・・・。
「手紙?物珍しいな・・・。って、荒鬼からじゃないか。」
人の目を引く一際派手な鎧を着けている武者が1人。
超将軍の『千力頑駄無(センリキガンダム)』である。
「え〜〜と・・・。何々・・・・・・。」
千力は、荒鬼から来た手紙を読み始めた・・・・・・。
 
約1時間後・・・・・・。
千力は、旅に必要な道具を全て揃えていた。
彼は目的地である『於雄得山』に出発した。
そして、他の超将軍と共に起こる惨劇に巻き込まれる事に、気付く由も無かった・・・。
 
こうして、全ての超将軍が『於雄得山』に到着した時には既に日が落ち、約束の時間が近づいてた事もあり、
荒鬼、爆流、鋼丸、そして当事者である號斗丸の4人が居る酒場へと足を向けていた。
「しかし、何だって私達を呼んだんですかねぇ?荒鬼は。」
「・・・・・・。さあな。」
因みに――雷鳴と鉄斗羅がこの様な会話をしていたのは、余談である。
 
こうしている内に酒場に着き、鉄斗羅たちは荒鬼たちを探した。
「お〜い。みんな、此処だ。」
と、酒場に入った途端に聞こえた声は、荒鬼であった。
「俺らも居るで〜〜。」
その後に続いたのは、爆流の声であった。
そして、全員席に着いた処で雷鳴が呼び出した理由を聞いた。
「聞きますけど、何故、私達を呼んだんしょうか。理由をお聞きしたいのですが。」
その言葉を聞いて、荒鬼、爆流、鋼丸の3人は顔を合わせて溜息を吐いた。
「あ〜っと・・・。理由は、舞威丸(ブイマル)なんや・・・。」
「間違いなくそうなるな・・・・・・。」
と、爆流と荒鬼は答えた。
それを聞いて、雷鳴、鉄斗羅、天地、獣王、千力の5人は・・・・・・。
「何ですか、そんな事で・・・。」
「しかし、何で呼び出されなければ・・・?」
「そうだ!!」
「何か、悪い事でも・・・・・・?」
「確かに・・・・・・。考えられるな。」
と、それぞれで文句を言った。
しかし…荒鬼たちは、この世の終わりとも言える表情になっていた。
「確かに、下らないかもしれない・・・。だ〜け〜ど〜な〜!!」
「俺らに取っちゃ、最重要理由なんや!!!」
2人が、余りにも興奮していたので、2人が落ち着くのを待った。
 
そして、約30分後・・・。
飲み物とおつまみが着たのと、2人が落ち着いたので、改めて理由を聞く事になった。
「少しは、落ち着きましたか?」
雷鳴が尋ねる。
「・・・。何とか。」
荒鬼が、落ち込んだ声で返した。
「・・・・・・。同じく。」
爆流も、同じであった。
「だが、最重要理由とは?」
鉄斗羅が、真顔で聞いてきた。
少し時間を置いて爆流が話し始めた。
「なぁ・・・。ある日、突然に親しい人の性別が、変わったらどう思う?」
と、他の超将軍には呆れる様な事を尋ねた。
この質問に、天地が目を丸くした。
「はぁ?幾ら何でも、混乱するぜ。そんな事があったら。」
『おいおい?』と、天地は爆流に問い返した。
「そうやな・・・。それが普通やな・・・・・・。」
『ほよよ・・・・・・。』と、泣きながら爆流が返した。
「い、一体、何があったんたい??」
「そ、そうだぞ。何かあったのか?」
爆流の余りの落ち込みように、獣王と千力が尋ねた。
荒鬼が『これじゃ、話すのは無理だな・・・。』と悟った為、代わりに理由を説明しようとした。
「ああ・・・。実はな・・・・・・。」
と、みんなに理由を説明しようとした時・・・。
 
『♪〜〜〜』
 
タイミングが悪いの良いのか、凛とした歌声が聞こえてきた。
「あれ?歌い手か?」
興味を持ったのか天地が聞いてきた。
「・・・。まあな。」
荒鬼は、そう答えた。
その言葉に全員が興味を持った様に、歌い手の少女を見つめた。
蝶をイメージしているのか、薄い緑と薄い青そして黒の布を幾重にも重ねた服だった。
整えられた顔立ちに、みんなが見惚れた。
だが・・・・・・。
 
「お前ら、見ねぇのか?」
あからさまに目を逸らしている荒鬼たちに、天地が尋ねてきた。
「・・・。謹んで御遠慮させて頂きます・・・・・・。」
「・・・・・・。俺も同じや・・・・・・。」
「・・・・・・。師匠と以下同文・・・・・・。」
と、3人から似たような答えが返ってきた。
「だが、あの少女・・・。ど〜っかで見た事ある様な・・・・・・。」
鉄斗羅からの言葉に、荒鬼たちは『ギクリ』と体を強張らした。
「よく見てみたら、そうですね。」
と、雷鳴が相槌を打つ。
「そうかぁ〜?」
続いて、天地。
「言われてみれば・・・。確かに、何処かで見ているような気がするたい。」
少女を見て、答える獣王。
そして、トドメの一言が荒鬼たちに落っこちた・・・・・・
「あ!!何処かで見た事あると思ったら、舞威丸に似てるんだ!!」
千力が思い出した様に叫んだ。
その言葉に他の超将軍達も『そう言えば・・・・・・。』と少女を見直した。
だが…その言葉に、荒鬼、爆流、鋼丸の3人は、完全に固まっていた・・・・・・。
その様子を見ていた鉄斗羅が『まさか・・・・・・。』と言う顔で聞いてきた。
「お、おい。3人共・・・。ま、まさかだとは、思うが・・・・・・。」
だが、鉄斗羅はそこで言葉を濁らせた。
もし、現実なら認めたくないからである。
「あれが舞威丸だなんて、言わないで下さいよ。」
内心動揺している、雷鳴だが口調は何時もと同じである。
「おいおい・・・・・・。んな事ある訳無いだろ。」
天地が、呆れた様子で雷鳴に言い返す。
「そ、そうたい。まさか・・・・・・。」
完全に、声が裏返っている獣王。
「そんな事が、ある訳・・・・・・。」
と、千力が荒鬼たちに問い返す。
そして、とんでも無い答えが返ってきた・・・・・・。
 
「・・・。全員のお察しの通りです・・・・・・。」
「・・・。そうなんや、あれな。舞威丸なんや・・・・・・。」
「・・・・・・。荒鬼殿たちと同じです・・・・・・。」
歌い手の少女を指差しながら、3人共…泣きながら答えた・・・・・・。
そして指を指された少女が、乾いた笑みを発しながらこう答えた。
「そうだ・・・。3人の言うとおり、俺だ・・・・・・。」
この答えに・・・。鉄斗羅、天地、雷鳴、獣王、千力は・・・・・・。
 
「「「「「嘘だろーーーーーーー!!!」」」」」
 
と、『於雄得山』全体に響き渡る声で叫んだ・・・・・・。

因みに、この後・・・。
「あ〜あ・・・。やっぱ、こうなったか・・・・・・。」
「予想はしていたが・・・・・・。」
「仕方ありません・・・・・・。」
「以下同文・・・・・・。」
そう。叫び終わった後…現実逃避する様に全員気絶してしまったのだ。
「家に運ぼ・・・・・・。」
『賛成〜〜。』
と、結局、荒鬼の家に全員お持ち帰りと相成ったのだ。
因みに、翌朝――気が付いた後、超将軍達は現実逃避でお互いを叩き合っていたそうだ。