今すぐにでも喰っちまいたい。
白い、な。
「…起きろよ、カラス。」
俺の肩に寄りかかって幸せそうに寝ている烏に、そう呼び掛ける。
だが…烏に起きる気配は、微塵も感じられない。――本当に、爆睡してやがる…。
「ちっ…。」
爆睡状態の烏を起こすのを諦めて、俺は舌打ちした。――一回、この状態になると、起きねーからな…。
「――あんま、信用すんじゃねーよ…。」
チームウェアから微かに覗く、烏の白い肌を見ながら、小声でそう呟く。
(――本当に、白いよな…コイツ。)
外に居る時間が長い割に、烏の肌は白い。…元々、日焼けし難いんだろう。
「…痕、残してーな…。」
――この肌に、自分の『痕』を残せたら、どれだけ満たされるだろうか?
無意識の内にそんな事を考えて、俺は溜息を吐いた。
「あの声の、所為だろうな…。」
この間(『欲求不満』を参照)聞いたあの声が、こんな事を考えた原因の一つだ。
「…何時になったら、喰わせてくれるんだ?」
眠っている烏に、俺は小声で囁く。
「―――俺は、お前が欲しい。」
そう囁いて俺は、規則正しく聞こえる烏の寝息を耳にしながら、目を閉じた。
――只、伝わる烏の温もりと寝息が、今の俺の全てだった。
End.
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