夢の中でもこんにちは



――眠れねえ!!

「…っ!」
ガバッと布団をはね除けて、起き上がる。
「――夢か…。」
そう呟き溜息を吐いて、頭を掻きむしる。――ここ最近は、これの繰り返しだ…。
「何で、アイツが出てくるんだ…?」
最近俺が見る夢に出てくるのは…何故だか、あの烏だ。
別に欲求不満と言う訳でもない。――寧ろそっちならば、血を見りゃ済む話だ。
暫く考え込んでいると、烏が俺の部屋に入ってきた。
「お、今日は起きてたのか?」
暢気にそう言いながら、烏は俺に近付いてくる。

「練習に行こうぜ?」
「テメェだけで行ってこい、ファッキンガラス。」

烏の言葉に、俺は即座に切り返し…もう一度寝ようと、横になる。
「あっ!咢、お前なあ!!」
「煩え。寝かせろ、カラス。」
怒鳴る烏にそう言って、再び目を閉じる…が、思いっ切り、布団を剥がされた。
「ファック、何しやがる!!」
「いーから、着替えろ。練習行くぞ」
安眠妨害に俺は怒鳴るが、烏はそんな事にはお構いなしにそう言って、手を差し出す。
「ちっ…。」
眠る事を諦めて、差し出された手を取ると…烏は嬉しそうに笑う。
――その笑みが、さっきまで見ていた夢とダブる。

『一緒に行こうぜ?』
――仕方ねえから、付き合ってやるよ…。

心の中でそう呟いて、身支度を済ませ…烏と共に、練習に向かった。

――この烏への好意を自覚し、欲しいと思うのは…まだまだ先の事だった。

End.