愛という名の拷問だな。



…起きてくれ、頼むから。

「はぁ…。」
俺を抱き込んだまま、暢気に眠っている烏を見て、溜息を吐く。
珍しく、練習直後に眠った烏に近付いた途端に、寝惚けた烏に抱き込まれてしまった。
「クソっ…!」
兎に角、抱き込んでいる烏の手を解こうと藻掻くが…烏の手を解く事も出来ないまま、今に至っている。
「…このカラスは…。」
抜け出す事を諦めて、烏の胸に耳を当てる。――…規則正しい、心音が聞こえる。
――この烏は俺が『その手』の感情を抱いている事は、知らない。
亜紀人からは『言っちゃえば良いのに』と、しょっちゅう言われる始末だ。

「…言えるんだったら、苦労しねぇよ。」

亜紀人みたいに、ストレートで好意を表せる事が出来るのならば…此処まで苦労はしてない。
内心でそう思いながら、烏の胸に子供の様に頭を擦り付ける。
「――愛してる…。」
小声でそう囁いて、烏の寝息と心音を子守歌代わりに聞きながら、眠くなった目を閉じた。

起きた烏が抱き込んでいた俺を見て…思いっ切り、顔を朱に染めたのは…言うまでもなかった。

End.