待っててくれる?



何時まで?

今日も烏の部屋に行って、コトに及ぼうとしたら…思いっ切り拒否られた。
「またかよ!このクソガラス!!」
毎度の如く拒否られた事に、いい加減腹が立って…思わず俺は叫ぶ。
「うっさい!」
そんな俺に、烏も負けじとそう返す。普段の俺ならば、聞き流す事も出来たのだが…如何せん、状況が悪かった。

「いい加減にヤらせろ、カラス!!」
「イヤなもんは、イヤだ!!」
そう言って俺も強く迫るが…烏にそう返されて、思いっ切り凹んだ。…ヘタレでも、何とでも言えばいいさ。
最初の頃は、何とか我慢していたが…最近は、流石に我慢出来なくなってきた。

――味わって、喰らいつくして、血の一滴まで…――

欲求不満と共に膨らんでいく、その衝動が流石に辛くて…ここ最近は毎日の様に、烏の部屋に行っていた。
――その度に拒否られて、余計に酷くなるばかりだったが…。
「どうして、そこまで、俺を拒むんだよ!?」
「そ、それは…。」
言葉を濁す烏の胸倉を掴んで、思わずそう叫んでしまう。
「…何時まで、待てば良いんだよ…?」
「咢…?」
俺が小声で苦々しくそう呟くと、烏は困惑した声で、俺を呼んだ。

「俺は、何時まで…待ちゃ良いんだよ…!?」

そう言って、烏の胸倉を掴んだまま…胸倉に顔を埋める。情けなくて、悲しくて、悔しくて…烏に今の顔を見られたくなかった。
暫くそうしていたら、烏が俺をそっと抱きしめてきた。
「…カラス?」
「ゴメン…。」
予想外の烏の行動に困惑している俺の耳に、謝る烏の声が聞こえた。
「その…ホントはな、イヤじゃないんだよ…。」
「は!??」
烏のとんでも無い言葉に、思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。
「おい…じゃあ、何で拒否ったんだ?」
烏の胸倉から顔を上げてそう尋ねると…烏は闇の中でも分かる程に、顔を赤く染め上げた。
「えっと…その〜…。」
言い辛いのか暫く唸っていたが、烏は意を決した様にこう言った

「だって…お前、何時もと違って…怖かったんだよ…。」

…よく考えてみたらコイツだって『女』だ。何時もと違う様子の、俺を怖がったのは当然だ。
目先の欲望ばかりに気を取られて、その事に気付かなかった俺は少し反省した。
「…悪ぃ…そこまで、気が回らなかった…。」
納得がいった俺は、烏の肩口に顔を埋めてその事を謝った。そんな俺に、烏は首を振るだけだった。
「なぁ…咢。」
何時になく弱々しく聞こえる烏の呼び声に、俺は肩口から顔を上げた。
「どうした、カラス。」
極力怯えさせない様に、俺は烏に話し掛ける。

「その…少しだけなら…。」

本日2度目の烏のとんでも無い発言に、俺は見事に固まった。
「…おい、意味分かって…!」
我に返った俺は、烏に慌ててそう言うと…烏はゆっくりと頷いた。
――恐らく…直接的にしなければ、構わないのだろう。――…問題は、俺がそれだけで…満足できるかどうかだ。
「歯止めがきかなくなったら、どうすんだよ…?」
「…気絶させて、も…いいから…。」
思わず俺がそう呟くと、烏は俺の服を強く掴みながらそう言う。
そんな烏を見て…直接的な無理強いは良くないと判断したが…此処まで言われたら、引き下がる事も出来なかった。

「――今日は、眠れると思うなよ、カラス?」

そう囁いて、漸く俺は烏に深く口付けて、その唇を味わう事が出来た。
その後は、何とか…欲望に歯止めを掛けながら、烏を完全にではないが…一通り、喰らう事は出来た。

――どうやら暫くは…烏の理性と恐怖を取り除く事に、専念しなければならない様だ…。

End.