目の毒だな。
…ヤバイ、だろ。
「ひ〜ま〜だ…。」
余程、暇なのか…だらけた声で、そう呟く烏。――…その姿は、薄手のキャミソール一枚だ。
「咢ぉ…暇〜。」
「…煩ぇよ、ファッキンガラス。」
何処となく強請る様な声でそう言う烏に、俺は…そんな烏の言葉を一刀両断する。
烏は不満そうな顔で睨んでくるが…俺は烏から目を逸らす。――…理由は聞かないでくれ…。
「おい、咢?」
目を逸らしたのを、不思議に思ったのか…烏が顔を覗き込んでくる。
その拍子に片方の肩紐が落ちて…――って、おい!見えてるっつーの!!
「っ!」
それを目にして、思わず顔が紅潮する。――…烏の方は気にしてないのか…ずれた肩紐をそのままに、更に覗き込んでくる。
「咢、どうしたんだよ?」
「――…何でもねぇ…!」
首を傾げて尋ねてくる烏に、俺は辛うじてそう返す。俺の答えに、烏は怪訝な顔をしたが…ハッキリ言って、それに構っている余裕はない。
(――ちょっと、ヤベェ・・・かも・・・。)
そう思いながらも…どうしても視線は、烏の方にいってしまう。
――…そりゃ俺だって『男』な訳だから、好きな奴が…そー言うカッコをしてると、その…襲いたくなる訳で…。
内心でそんな事を思っていたら、烏が急に背中から抱き付いてきた。
「か、カラス?」
考えていた事を悟られない様に、普通に言ったつもりだったが…微妙に吃ってしまった。
「なぁ…ホントに、何でもないのか?」
心配そうな声色でそう言う烏。――気遣いは有り難いのだが…耳元で言われると、本気でヤバイ。
「…………。」
烏の問い掛けに答えられずに、無言でいると…心配そうな声色で烏が、俺を呼んだ。
「咢…?」
――…マズいっ!!
「あ、ちょ!!」
引き止める様な烏の声が聞こえたが…それを無視して、逃げる様に烏の部屋を出た。
「…や、ヤバかった…。」
部屋を出た途端、そう呟くと共に…安堵の溜息が漏れた。
――あのまま、あの部屋にいたら…本気で、烏を襲いかねなかった…。
「…どうするか…。」
完璧に火が点いてしまった体と精神を…どう冷ますか考える。それを思うと、思わず溜息を吐いてしまう。
「…外に行くか…。」
――こうなったら血を見て昂りを押さえ込むしかない。そう判断して俺は、A.T.を履いて外に飛び出した。
因みに、この日――因縁を付けてきたカスライダーは、『手加減無し』で完膚無きまでに叩きのめしてやったのは…別の話。
後日――理由を聞いてきた烏に、事を白状した所…思いっ切り首を傾げられたのは…言うまでもない。
――頼むから、自覚してくれ!!
End.
BACK