そそるカッコだな。
をい…。
何気なく烏の部屋に来てみたら、当の烏は寝ていて…その姿に、思わず天井を仰いだ。
「――…何つー、カッコで寝てやがんだ…」
寝ている烏の服装は、Tシャツ一枚と言う格好だった。
端から見たら、そそる姿ではあったが…流石に今は、襲う気も湧かないので…烏のベッドを背凭れに座った。
暫くそのままで居ると…烏が目を覚ました。
「ぉ…?」
「目ぇ覚めたのか。」
そう声を掛けると、起きた烏は俺を見て、緩慢に起き上がった。
「何か用か…?」
眠りが浅かったのか…烏は欠伸をしながら、多少寝惚けた声でそう言う。
「…いや。」
特段用がないのも事実なので、俺はそう答えた。
「そっか。」
烏は興味なさ気にそう答え、再びベッドに転がった。
「…おい、カラス。」
ある事を思い出した俺は、烏に話し掛けた。
「何だよ、咢。」
ベッドに転がったままだった烏は、そう言って体をこっちに向けた。
「あんま、そんなカッコすんな。」
「何でだよ?」
不機嫌そうにそう言うと、烏は首を傾げた。
「惚れたヤツが、そーいうカッコしてると…男から見たら、そそられんだよ。」
そう言った瞬間、意味を理解したのか…烏は一気に顔を真っ赤に染め上げた。
「な…ななななっ!??」
一気に部屋の隅まで後退り、口を金魚みたいにパクパクさせる烏を見て、少しだけスッキリした。
「それと…もう一つ」
妖しく嗤いながら烏に近付いて、トドメの一言を囁いてやった。
「――俺も男だって事、忘れんなよ?」
End.
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