そっと。



意外と…。

「なぁ…何だよ、さっきから…。」
顔を赤らめて、半ば諦めた様にそう言う烏。
「…別に。」
烏の胸を指で触れながら、俺はそう答える。――…意外とあるんだな、コイツ。

「咢…も、もう…良いだろ?」
耐えきれなくなったのか…泣きそうな声で、烏はそう訴える。
それを聞いて触れるのを止めると…烏は部屋の隅まで後退った…ちっ、やりすぎたか。
「…何なんだよ、急に…。」
「いや…。」
顔を赤くしたまま…こっちを睨む烏。そんな顔で睨まれても、別に怖くはないので、そう言って正直に話す事にした。

「『柔らかそうだな』って、思っただけだ。」

正直に言うと、烏に頭をグーで殴られた。――…痛ってぇ!本気で殴りやがった!!
「ファック!何しやがる、ファッキンガラス!!」
「それは、こっちの台詞じゃーーーーーー!!」
痛む頭を押さえながら、俺が怒鳴ると…烏も負けじと怒鳴る。
「普通、そんな事言うか!?セクハラだぞ、それ!!」
「そー言う意味で、言ってねえだろ!!」
暫く言い合っている内に…馬鹿馬鹿しくなって、お互いに溜息を吐いた。
「あ〜…もう、止めようぜ…。」
「…同感、アホらしくなった…。」
そう言って…お互いその場に座って沈黙する。
「なあ…咢…。」
「…何だよ?」
諦めた様に溜息を吐きながら、俺を呼ぶ烏。何かと思って、烏の方へと顔を向けた。

「――今度言ったら、また殴るからな。」

烏のその一言に、ほんの少しだけ…苦笑した。――…『嫌い』と言われなかっただけ安堵した。

End.