穏やかな夜だっ
た…破牙丸は、妙な気配にハタと目を覚ました。
「…誰か、居んのか…?」
目は開けてはいるが寝惚け声で、破牙丸は、そう呟いた。
だが…部屋はシン…と、静まり返っている。
気の所為だと思い、再び眠ろうとした矢先…声が聞こえた。
「おや01(ゼロワン)、冷たいなぁ。」
「―――――――――!!!」
その声と呼び方に、破牙丸は、一気に意識が覚醒し、飛び起きようとしたが…
相手に肩口の辺りを、強く押さえ込まれて、起き上がる事は出来なかった。
「テメー…何しに来やがった…!!」
破牙丸は、押さえ込まれたままの体勢で、そう叫んだ。
「…静かにしないと、皆が起きるんじゃないのかな…?」
クスクスと、戯ける様に侵入者は笑い、差し込んだ月明かりが、その姿を浮かび上がらせた。
自分と全く同じ顔…似た声……それは、嫌と言う程、嫌っている…兄弟。
「何しに来やがった…02(ゼロツー)。」
破牙丸は、侵入者――02――を睨みながら、低い声で問い掛けた。
「ちょっとね…逢いに来たんだよ、キミにね。」
そんな声を物ともせずに、02は、破牙丸に囁く様に、そう言った。
「ケッ…テメーには、オイラは会いたくねーよ。」
破牙丸は吐き捨てる様に、そう言った。
「…そうか、そう言うのなら…此処にいる全員、殺しても良いけど…?」
その言葉が気に障ったのか、02は、押さえ込む力を強めて、低い声で囁いた。
「――!…解ったよ…一体、何を!?」
囁かれた言葉と声の低さに、破牙丸は、彼が本気だと悟り、そう言ったが…
いきなり引き寄せられてしまい、二の句が続かなかった。
「良いか?今のキミの命運は、ボクが握っているんだ…その事は、忘れるなよ?」
破牙丸の顎を掴み、ギリギリまで自分の方へと引き寄せ、覚えさせる様に、02は言った。
「…っ!」
掴まれた顎が悲鳴を上げ、破牙丸は、痛みと02が纏う雰囲気の怖さに、声にならない悲鳴を上げた。
「解ってくれたみたいだね…じゃあ、此処で話すのも、アレだし…ボク達の居場所へ行こうか?」
声にならない悲鳴を上げたのを見て、02は破牙丸の顎から、手を放し…そう誘った。
「居場所って…?…解ったよ…。」
掴まれた顎に痛みを覚え、『居場所』と言う単語に、破牙丸は首を傾げたが…他の面々に
気付かれるのも嫌なので、02の言葉に従った。
「で…?さっきから、聞いてんだけど…会いに来たんじゃねーだろ?」
破異武立闘の移動手段でもある、乗り物の一室――02の寝室――に連れてこられた、
破牙丸は、ゲンナリした表情で、02に尋ねた。
「知りたいかい、01?」
02は、楽しそうな笑みを湛えながら、破牙丸に言った。
「?あぁ…知りてーよ…。」
その言葉に破牙丸は疑問符を浮かべたものの、素直に知りたかっただけなのでそう言った。
「…それじゃあ、教えてあげるよ…。」
さっきまでの笑顔とは質が違う笑みを浮かべ、02は破牙丸を寝床に押し倒した。
「――――おい?!!」
いきなり押し倒されて、破牙丸は、混乱した声を上げた。
「ボクがしたかったのは、こう言う事なんだけど?」
破牙丸を押し倒したまま、02は、揶揄する様にそう言い、破牙丸に口付けた。
「んむぅ!?」
唐突な口付けに、破牙丸は、くぐもった声を上げ、咄嗟に口を閉じた。
「……………」
その抵抗を見て02は、口をこじ開けようと執拗に舌で、破牙丸の唇をなぞった。
「…ぅ…」
執拗に唇をなぞってくる、02に、息苦しさか、破牙丸は僅かに唇を開けた。
そんな僅かな隙を、02は見過ごさずに、自らの舌を潜り込ませた。
「……!!んーっ!!」
口の中で縦横無尽に、動き回る舌に激しい息苦しさを感じ、破牙丸は02の胸板を叩いた。
すると…02の舌は、あっさりと離れていった。
「はぁ…はぁ…。」
顔を紅潮させ、自らの舌と02の舌とを繋ぐ、銀色の糸を、破牙丸はボンヤリと見つめた。
「キモチ良かった?」
口元の唾液を手の甲で拭いながら、02は揶揄する様に、破牙丸に囁きかけた。
「…っ!!!」
それを聞いて破牙丸は、羞恥心からか、更に顔を赤くして、せめてもの抵抗に、身体をバタつかせた。
「ムダだよ?」
そう言って02は、破牙丸の小さな手首を、片手で頭上に纏め上げた。
「テメ…っ!!」
手首を纏め上げられ、僅かに走る痛みに、破牙丸は、顔を顰めながら声を上げた。
「―――抱かせろ、01。」
02は残った手で、破牙丸の顎を掴み、自らの顔を近付けて言い放ち、破牙丸の身体に覆い被さった。
破牙丸はそれをはね除けようとしたが…それが叶う事はなかった。
ヤルか、ヤラれるか…その答えは一つ。
只ひたすらに、持て余す身体の想像のままに、キミを求めるだけ…情欲の焔を吹くだけさ。