ああ、その痛みは…。

10.「好きだよ。」

 

未だ夜が明けきっていない時間――02は、眠っている破牙丸を眺めていた。
「結局…こうなっちゃったか。」
そう呟きながら02は、寂しそうな表情を浮かべた。
――自分は、確かに01を、欲しがったけど‥・。――
「これじゃあ、意味ないしなぁ…。」
未だ眠っている、破牙丸の頭を撫でながら、02はそう呟いた。
「戻しに行きますか。」
そう言って――徐に破牙丸を抱き上げると、02は最初に破牙丸が居た宿へと足を赴けた。

「―――流石に…この時間じゃ、見付からないね。」
破牙丸の身体を布団に横たえながら、02は小声で呟いた。
「コレで、キミとはお別れだね。」
破牙丸の身体を横たえた後、去り際に02は振り向いてそう呟いた。

「好きだよ、01。」
――酷い事をしたけど、本当に、好きだよ――。

最後に破牙丸の耳元で、そう囁き…頬に口付けを落とし、02はその場から姿を消した。

「ん…?」
射し込んだ光に、破牙丸は、目を覚ました。
「……っ!?」
起き上がろうとしたその時、身体中に激しい痛みが走った。
「…ウソだろ…?」
その痛みで、昨夜の事を思いだし…屈辱か悲しみか…自然と破牙丸の目からは、涙が零れ落ちた。
あの事は夢であって欲しかった…だが――身体に走る痛みは、それを否定したのだ。
そう思いながら破牙丸は、心の中で激しく慟哭した。

「好きだけじゃ欲しい物は、手に入らないか…。」
自らの手を眺めながら、02は小声で呟いた。
「どんなに焦がれていても…キミが、ボクを受け入れないのは、解っていたからね…。」
02は目を閉じながら、感情の籠もってない声でそう言った。
空を見上げて、02は寂しそうに言った。

「好きだよ、01。」
――例えキミとの時間が、泡沫だったとしても…――。

破牙丸に言った時とは違い…まるで自らに言い聞かせる様に、02はそう言った。
そして自らの居場所である、破異武立闘の移動手段の乗り物が迎えに来たので――戻っていった。

ああ、その痛みは…恋故の痛み。
例え焦がれる程、白い花の様なキミを愛していても…それは叶わない恋。その刹那を想う度に、痛みは強くなる。