三成と向かい合って静かに珈琲を飲む。
ほろ苦い味はどうも好きになれない。だが砂糖がこの理科準備室にあるわけないので
我慢して苦味に堪える。
三成が態々わしに差し出した珈琲だ、残したらきっとこの男は激怒するに違いない。

(あ、…)

突如身体に寒気が走った。
ぶるりと身震いする。

(と、トイレ行きたい…)

砂糖にさようなら (苦いのも嫌いじゃない)


珈琲を飲んだせいか、無性にトイレに行きたくなった。
急いで黒い革製のソファーから立ち上がり、トイレに向かおうとした瞬間、ガチャンと
陶器の割れる乾いた音が響いた。
どうやらわしの脚が机にぶつかってしまったようだ。そしてその衝撃でマグカップが
床に落ちてしまった。

(やばい……)

珈琲がじわじわと床に広がる。
尿意と突然の失態により脳内は混乱していた。早く拭かなければ、嗚呼でも漏れて
しまいそうだ。

泣きそうになるわしの視界では白い破片が鈍く光る。

わしが座っていた向かい側の黒いソファーに恐る恐る目をやれば、三成が愉悦の
笑みを浮かべていた。

「割ったマグカップを先ずは片付けろ、仕置きはその後だ」
「は、い…」

なるべく、ゆっくり片付けよう。

三成は手伝う気など更々無いようで、憎たらしい程優雅に脚を組んでいた。

「終わったか」
「…一応」

片付け終わってしまった…
溢した珈琲を拭き取った床は綺麗に光を反射する。

わしはこの男の仕置きほど嫌いなものはないと思う。今回の仕置きはどんな暴力
だろうか…痣にならない程度だと良いんだが…。

「何やら焦っているな、どうした」
「と、トイレに行きたくて…」

内腿を擦り合わせ、尿意に堪える。
その僅かな動作を見抜いた三成が口角を吊り上げ、にぃと笑った。

すらりとした三成の脚が、わしの脚を払う。
わっと間抜けな声を上げてわしは床にしたたかに頭を打ち付けた。
火花が瞼の裏側に散る。

「い゛っ、…」
「すまない脚が滑った」

下腹部に三成が脚を乗せ、体重を掛けてくる。思い切り踏みつけられ、思わず
漏らしてしまいそうになった。

「ぐっ、ぅ…や…やめ、」
「ああ、こっちが良かったか?」
「ひぃっ!」

情けない悲鳴が溢れる。
三成がわしの脚を持ち上げ、股間に踵をぐりぐりと押し付けてきたのだ。そして
規則正しくゆるゆると踏みつけてくる。

「うあっ!い、いやだぁっ…みつな、…はなしてくれぇッ!!」
「強情だな、私は素直な奴の方が好きだぞ」

知るか!
怒鳴り付けてやりたかったが、わしの口唇から洩れるのは憐れな悲鳴だけだった。

「ん゛んんっ…や、ぁあ゛ッ!」

刹那、三成がわしの股間を踏み潰さんばかりに力を込めてきた。
体重を容赦なくかけられ、限界寸前だった尿意も理性も、崩壊する。

「ぁあ゛っ!…ひ、う゛ぅぅ…」

ぶるっと身体を震わせ放尿すれば、三成は満足そうに目を細めた。
スラックスから染み出すあたたかなモノに泣きたくなる。

わしが溢した珈琲のように、それはじわじわ床に広がる。情けなさから目尻に涙が
溜まった。

「ふっ、ぅえ…」
「高校生にもなって、恥ずかしい奴だ。床がまた汚れた」
「ひっ…う゛ぁ」

ぐちゃぐちゃと厭な水音が響く。
またゆるゆると踏みつけてくる感覚に赤面する。今度は快楽がわしを襲ってきた。
勃ちあがる自身が情けなくて、ついにはぼろぼろと涙が頬を伝い落ちてきた。

「家康、私に乞い願え。何をして欲しいのか、浅ましくねだれ」
「っ…わしは、」

脚を股間から退かし、三成がわしの頬に舌を這わせる。灼熱のように熱い舌が涙を
舐めとる。

「き、す…してくれ、三成先生…」

ぎょっと三成が目を見開く。
こんなことを言われるとは思いもしなかったのだろう。この男の驚いた顔には優越感が湧く。
いつもやられっぱなしだから、ささやかな復讐だ。

「…今日は覚悟しろ、家康」

珍しく三成がわしを優しく抱き締める。
白衣が汚れてしまう、そんなどうでも良いことが頭をよぎった。

「、ん…」

だが、咥内から広がる蕩けるよな痺れに、直ぐに何も考えられなくなる。
熱の篭った吐息に、思考はどろどろに溶かされる。

ほろ苦い珈琲の味も、たまには悪くない。


38様から頂きましたチャットの宿題SSです。
自分では書けないプレイなので、とても魅力的です。
SS――ありがとうございました。