背中の傷は男の勲章
痛い…。
朝起きて背中を見てみたら、見事に引っ掻き傷があった。
「――またかよ…。」
俺は呟いて、未だに眠る烏を見る。
――その寝顔は…昨夜、アレだけ乱れたとは、思えない程に穏やかだ。
「…痛てぇんだよ、このファッキンガラス。」
俺は溜息を吐きながら、眠る烏の頭を小突く。――…疲れているのか、全然起きる気配はない。
「う゛〜…。」
夢を見ているのか、呻きながら寝返りを打つ烏。
「…面白れぇ。」
呻きながら寝言を言う烏を見て、思わず笑ってしまう。
暫くはそんな烏を眺めていたが…流石に飽きてくる。今度は、紅い跡の付いた肌を…指でゆっくり辿る。
「ん〜…。」
さっきの呻き声とは違い…擽ったそうに、身を捩る烏。そうしている内に、烏が目を覚ました。
「…アギト…?」
「起きたか、カラス。」
未だに眠いのか…ボンヤリと寝惚けた声で、俺を呼ぶ烏に、そう返す俺。
「――…もうちょい、寝る…。」
暫く寝惚け目を彷徨わせた、烏はそう呟いて、もう一度目を閉じた。
「…おい。」
思わずそう呟くが…俺も眠気が襲ってきたので、烏の隣に潜り込んだ。
「――起きたら、喰わせてもらうぜ?」
幸いにも…今日は休日で、チームとしての練習も、明後日まではない。
後一日は、ヤッたとしても文句は言われないだろう。
『どうせ、今夜は夜の散歩は…無理だろうからな。放すつもりもねーし…。』
そんな事を思い、背中の傷の微かな痛みを感じながら、俺も意識を手放した。
――再び起きた俺が、烏を再び喰らい尽くして、また、引っ掻き傷を拵えてしまったのは…言うまでもない。
End.
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