失敗した



ま…マズった…。

「…悪かった…。」
「―――――――」
謝る俺に、沈黙…いや、シカトを決め込んでる烏。
切欠は――…ミステリーを見ていた烏に対しての、軽い一言だった。

「確か…犯人、女じゃなかったか?」
―――ビシィッ!!
再放送とは言え…夢中で見ていた烏に対しては、最悪の一言だったらしく…見事に、キレた。

それからは、もう…思い出したくもないし、言いたくもない…。
嗚呼…本当についうっかりのミスをやらかした、自分を恨みたい。
「カラス…。」
「…」
――パシンッ!
一方にこっちを向かない、烏に手を伸ばすけど…見事に叩き落とされ…何となく悲しくなってきた。
本当は…腕尽くでこっちに向かせりゃ、良いのだけど…それが出来ない自分は、完璧にヘタレだ。
[替わろうか?咢。]
――亜紀人の声が聞こえるが、シャットアウト。

「――ぁえ。」

暫く経って、無言だった烏が言葉を発した。
「あ?」
聞こえなかったので、思わず聞き返す。
「だ〜か〜ら〜…『夜の散歩に付き合え』っつたんだよ!!」
聞き返してきたのに、ムカついたのか…烏は声を荒げながら、そう言い放った。
「――…そんだけで、良いのか?カラス。」
烏の言葉の内容に思わず…ポカンとする。
「オチを言われたのは、腹立つけど…付き合ったら、チャラにしてやる。」
未だ怒ってはいるけれど、その言葉に偽りはない。
「…分かった、付き合ってやる。」
そう言った瞬間、烏の顔は漸く笑顔になった。

――…それだけで、お前の機嫌が直るのなら、幾らでも付き合ってやる。

そして夜…機嫌が直った烏と2人で、夜の散歩を楽しむ事が出来た。

「結局…俺もカラスには、弱いって事か…。」
空を翔る烏を見て、苦笑しながら…そう呟いて俺も、烏の後を追った。

End.