思春期



頼むから…今は近付くんじゃねえ!!

「なぁ…そっち行っても――」「来んな。」
烏の言葉を、最後まで聞く事なく、一刀両断する。
俺の言葉に、烏は顔を顰めたが…今は仕方が無い。
今、くっつかれたら…――間違いなく、キレる…――何がとは敢えて、聞かないで欲しい。

チラ…っと、烏を見る。
シャツから覗く肌は艶めかしく、思わずドキリとする。
『無自覚の色気程、厄介なモノはない…』
そんな事を考えていると…何か柔らかいものが、背中に当たった。
「カ、カラス!?」
それが何か分かった瞬間、情けない事だが…大声を上げてしまった。
「だってよ〜…お前、さっきから、おかしいぞ?」
そう言いながら、烏は…顔を覗き込んでくる。その所為で、胸が余計に背中に当たる。
「離れろ!!」
思わず声を荒げた。只でさえ、なけなしの理性を掻き集めて、耐えていると言うのに…。
「絶っ対に、ヤダ。」

―――…プツン。

その言葉を聞いた瞬間…糸が切れる様な音が、頭の中で聞こえた。
「な!咢!!?」
困惑した烏の声が聞こえるが、聞こえない振りをして、烏を押し倒した。

「――俺は『近付くな』って、言ったよなぁ?」

獰猛な笑顔を浮かべながら、そう言ってやると…烏は顔を、思いっ切り引きつらせた。
「ちょ、マジで待て!!!」
覗く肌に手を這わせると、露骨に抵抗する烏だが…――もう知るものか。
人が折角、我慢していたと言うのに…誘いを掛けたのは烏。ならば、遠慮はしない。

「愉しもうぜ?」
――獣の様に思うが侭に、喰らい尽くしてやろうじゃないか。

そう言って…俺は満足するまで、思う存分に、烏を貪り尽くした。

End.